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新世界王者・中谷潤人 恩師の死、中卒で渡米…日本人初の“世界6階級制覇”が狙える逸材 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2020/11/09 17:00

新世界王者・中谷潤人 恩師の死、中卒で渡米…日本人初の“世界6階級制覇”が狙える逸材<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ボクシング界に誕生したニューホープ、中谷潤人。井上尚弥が初めて世界タイトルを獲得した日を思い出す

「さすがに高校くらいは」と躊躇した家族は…

 日本に帰国したあともアメリカへは繰り返し足を運び、トレーナーのルディ・エルナンデス、岡辺の両氏から指導を受け、現地の実力者と手を合わせて実力を磨いた。中学を卒業して間もないアマチュア選手は周囲に認めてもらおうと、相手が世界チャンピオンクラスでもスパーリングを断らなかったという。

 長男の志の高さを目の当たりにし、「さすがに高校くらいは」と最初は躊躇した家族も中谷の夢を全面的にバックアップする。地元で開いていたお好み焼き店をたたんでM.Tジムのある神奈川県相模原市に移住した。

 中谷は周囲の期待に応え、17歳でプロデビューすると4回戦から全日本新人王、日本ユース王座、日本王座とステップを踏み、ついには頂点に立った。いまは村田諒太(帝拳)、井上尚弥(大橋)らアマチュアで実績を積んだ選手が世界王者になるのが主流の時代であり、中谷のような歩みは極めて珍しい。試合後に「4回戦選手の手本になれたと思う」と胸を張ったのにはそうした事情がある。

日本人選手初の世界6階級制覇もあるか

 新型コロナウイルスの影響もあり、初防衛戦のスケジュールは簡単に見えてきそうにはないが、本人は「防衛に価値を見いだしている」と語っており、まずはフライ級で防衛戦を行う見通しだ。

 フライ級ではかなり大柄なため、階級アップもいつの日か訪れるだろう。エルナンデス・トレーナーからは「スーパー・フェザー級くらいまで上げられる」と言われたことがある(ボクシング・ビート2020年1月号)。もしこれが現実になれば日本人選手初の世界6階級制覇。世界チャンピオンになったばかりで気が早すぎるが、そんな期待を抱いてしまうのが中谷というボクサーなのだ。

 試合翌日、リモートで記者会見を開いた中谷は「結果には満足しているけど内容的には反省点がある。さらに強い選手と戦うためにはさらに成長していかなくちゃなという思いがある」と決意のほどを口にした。新米チャンピオンは世界的にはまだ無名の存在とはいえ、それは井上が初めて世界タイトルを獲得したときとそう変わらない。日本ボクシング界きっての逸材が今、スターへの道を力強く歩み始めた。

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