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「実力本位」か「地元密着」か?
ドラフトに滲む各球団の価値観。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS/Naoya Sanuki
posted2010/10/25 12:30
楽天の由規指名に見る地域密着型球団のドラフト。
「うちのスカウトの評価としては唐川の評価が1番高かった。唐川を指名するということが頭にもあった。でも、由規は仙台育英出身の地元の選手、しかも、彼は楽天に入りたいという報道もあった。地元のあれだけ力のある選手が楽天に行きたいと言っているのに、そんな選手を指名しないわけにはいかんだろ、と。楽天は地域密着の球団でもあるしね。それに、唐川の方がいい評価といっても、そんなに由規(の評価)が落ちたわけではなかったから」
結果、抽選で外してしまうわけだが、この時の楽天の姿勢には「なるほど」とうならされるものがあった。特に楽天のような地元に愛される環境がある球団の場合は、そういう選択があってもいいのではないか、そんな気がしてきたのだ。
とはいえ、実際のところ、すべての球団がそこまでの方針を打ち出せるかどうかというと、そう簡単には行かない。日ハムの当銀スカウトは「地元を優先するかどうか……スカウトとしてはそれがどう決められているか分からない。こっちとしては選手を見て評価するだけ。ただ、地元を優先するといっても、じゃ、北海道にどれくらい欲しい選手がいるのかっていう問題もあるからね。基本的には実力になるだろう」と話す。
東海地区の逸材を上手く指名してきた中日。
確かに、当銀スカウトの意見は的を射ている。「地域密着だから」と声高に言っても、必ずしもその土壌があるわけではないのに地元の選手を優先しても、無謀なドラフトを繰り返すだけである。
「基本は実力。双璧なら地元」と話すのは中日の米村スカウトである。'08年には右ひじの状態が不安視された伊藤準規や、'06年の大学生・社会人ドラフト3巡目で、中央球界では無名の浅尾拓也(日本福祉大、愛知二部リーグ)を指名するなど、東海地区の逸材を上手く指名しているのが中日である。「うちは昔弱かった時からも地元を獲っていて、それで支えられてきたものもあるから、地元の選手を無視していないところはある。山田喜久夫あたりくらいからは、地元の選手でも活躍するようになって、今に至っている」と同スカウトは言う。
'06年の高校生ドラフトでの中日の姿勢も明快だった。
当時は、田中将大、堂上直倫、増渕竜義、前田健太がトップ評価だった。田中には日ハム、楽天、オリックス、横浜、堂上に中日、阪神、巨人、増渕に西武とヤクルト、ソフトバンク単独指名が伝えられていた大嶺祐太に千葉ロッテが横入りし、前田健太を広島が単独指名した。
中日は迷わずに地元・愛工大名電高の堂上指名を決めた。米村スカウトは言う。
「もちろん、会議では田中の名前も出たし、他の名前も出た。けど、実力は甲子園で実証されていたし、当時は野手が欲しいというのもあった。堂上は兄もいて、『堂上兄弟』で売り出すこともできる。それで、(堂上)直でいきましょうと、そういうことだった」