この男なくして、近年のリバプールの成功はあり得なかった。熱い言葉とアクションで選手とファンのハートをつかみ、CLとプレミアリーグのタイトルをもたらした「インクレディブル・ワン」の、素顔と頭の中に迫る――。
敗れたあとの振る舞いにこそ、監督の真価が現れる。
2015年12月、リバプールはアウェーでワトフォードに0-3で敗れ、ユルゲン・クロップ監督就任から約2カ月、一進一退を繰り返していた。予定されていたクリスマスパーティーは、キャンセルになると思われた。
だが髭面のドイツ人監督は、こう呼びかけた。
「みんなでできることは一緒にやるのが私のモットー。今晩においてそれはパーティーだ。お酒を飲んでもいい。でも午前1時前に帰るのは許さない」
後にこの一件を伝えたデイリー・ミラー紙は「なんて上司だ!」と称賛した。
「君たちを誇りに思う。今日は運がなかっただけ」
これまでクロップは「敗戦後」にたくさんの伝説を残してきた。'16年のヨーロッパリーグ(EL)決勝でセビージャに1-3で敗れたときは、試合後のロッカールームで「これは終わりではない。始まりだ!」と鼓舞した。試合後の慰労パーティーで誰よりも先に踊り出したのは監督だった。
'18年のチャンピオンズリーグ(CL)決勝でレアル・マドリーに1-3で打ちのめされたときは、「俺らはクールであり続けるぜ」と熱唱する動画を投稿した。
'18-'19CL準決勝第1レグ後には、バルセロナに0-3で惨敗したにもかかわらず、ロッカールームで選手たちを絶賛した。
「こんなにもチャンスを作った君たちを誇りに思う。今日は運がなかっただけだ。大きな自信とともに第2レグに臨もう。もし逆転できなかったとしても、最高に俺たちらしいやり方で挑もうじゃないか」
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