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馬を愛する学者が紐解く、楽しい競馬史 “名講義”。~東大名誉教授とともに、 馬と人類の歴史を辿る~

2016/11/13

 先生は古代ローマ史の大家(東大名誉教授)で、趣味の競馬歴は半世紀に及ぶ。世界最高峰の国際レース・凱旋門賞を何度も観戦した。初めて観たのは1986年、ダンシングブレーヴ(英)が仏、独、日本のダービー馬たちを一気に抜き去った史上最高とされたレースだった。先生は背筋をふるわせ、「もう一度あんなレースにめぐりあえたら、この世に未練はない」と感動した。本書を書き終え、「趣味のライフワークをやり遂げた安堵感がある」という。楽しい“名講義”だ。

 講義は、古代ギリシア、ローマの戦車競走の馬の話から始まる。碑文に残された勝馬から名馬の産地を特定する。モザイク画の馬にほっそり形とがっしり形があることから、古代人も長距離馬(ほっそり)と短中距離馬(がっしり)と目的に応じて育成していたのではと推測。中世のヨーロッパ諸国は十字軍の遠征で中東の馬の優秀性を知った。アラブ馬は略奪されたり盗み出されてヨーロッパに渡る。大陸の国々において馬にまつわる競技は馬を御す人の技術(馬術)を争うのが主流だった。しかし、イギリスは馬の「速さ」を争う競馬に向かった。3頭のアラブ馬(三大始祖)から「サラブレッド」が作り出された。競馬への王侯貴族の支援、庶民への普及。馬の競走に金をかけて楽しむ近代競馬への道が開けた。200年ものうちに競馬は世界のレジャーになっていく……。

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photograph by Sports Graphic Number

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