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その純潔さ、頑なにつき。~ヴェンゲルの20年間は、ロマンチストが哲学を貫いた時間だった~

2016/10/15

 僕のようなファンは別にして、人がアーセン・ヴェンゲルをどう思っているかというと「少し時代遅れの元・知将」とバカにする雰囲気を感じてしまう。

 今年の10月で監督就任20年を迎えたアーセナルでの彼のキャリアは、最初の10年が栄光に満ち、後の10年は(FA杯以外)何も勝ち取っていないと言われる。その日々を400ページ超のボリュームで丹念に追う本書は、今のところのヴェンゲルを描く集大成といえるだろう。

 1989年1月2日、後にヴェンゲルをアーセナルに招聘したD・ディーン副会長(当時)が偶然彼を友人宅のパーティに招かなかったら、アーセナルはまったく違うクラブになっていたに違いない。そこから始まる栄光と苦悶の日々を、選手やスタッフなどへの丹念な取材によって細やかに描き出す本書。なんでも知っていると自負する熱いファンでも必ず未知の逸話に出会うだろうし、一方でニュートラルな読者には彼につきまとう誤解と真実を解き明かす傑作である。

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photograph by Getty Images/Wataru Sato

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