種子島ほどの面積しかない小島から世界有数の強打者が
続出しているのはなぜか。2人のレジェンドのルーツを辿った。
美しい街並が世界遺産に登録されているオランダ領キュラソーの首都ウィレムスタットでは、3月2日、1年間で最も色鮮やかな光景が広がり、喧騒の渦が巻き起こっていた。
カリブ海に浮かぶ人口15万人、種子島と同じほどの国土面積の小島はその日、島全体を挙げて行われるカーニバルのクライマックスを迎えていた。ラテン音楽の強烈なビートに乗り、華やかに扮装した現地民が踊り狂い、沿道の人々はビールやウイスキーのスプライト割りで肉を流し込む。湧き出るエネルギーは、カリブ海独特のものだ。
人波をかきわけて歩いていると、国旗と同じ紺色に白字でペイントされた車を見つけた。
「バレンティン、WE LOVE YOU」
昨年、日本球界でシーズン60本塁打の記録を打ち立てたウラディミール・バレンティン(東京ヤクルトスワローズ)を称えたものだ。ウィレムスタットでは、小さな島で大打者になった彼の偉業達成を祝う看板、ポスターをいくつも目にすることができる。
「ココ(バレンティンの愛称)はキュラソーの野球界にたくさんのドアを開けてくれた。彼のおかげで現在、野球をできている少年が数多くいる」
そう話すのは、2004年アテネ五輪にオランダ代表の同僚としてともに出場したチャイロン・イセニアだ。かつてタンパベイ・レイズの2Aに所属し、現在はメジャーリーグと協力して地元の少年やコーチに野球振興、大学進学を後押しする組織を運営している。
バレンティン、AJだけでなくメジャーで活躍する選手も。
日本でプレーするバレンティンやアンドリュー・ジョーンズ(東北楽天ゴールデンイーグルス)のように、近年、世界の野球シーンで活躍するキュラソー出身者が増えている。近隣のドミニカ共和国やキューバと同じく身体能力の高さが特長で、メジャーではアトランタ・ブレーブスのアンドレルトン・シモンズが昨年、ショートのゴールドグラブ賞に輝いた。ケンリー・ジャンセンは捕手としてロサンゼルス・ドジャースと契約し、現在は守護神として君臨している。ボルチモア・オリオールズのジョナサン・スコープは現地時間4月9日、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大に手痛い先制本塁打を浴びせた。
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