フィギュア不毛の地と呼ばれる韓国。そんな場所から突如現われた、銀盤の女王。なぜ彼女はこれほど強くなれたのか。その秘密を探るため、故郷を訪れコーチたちに話を聞いた。
かねがね、キム・ヨナの存在を不思議に感じていた。なぜ、韓国の土壌から2009年の世界選手権を制し、バンクーバー五輪の金メダル争いで本命視されるような突出した存在が生まれたのだろうか、と。
バンクーバー五輪の韓国女子フィギュア代表の枠は2つだ。もうひとつの枠を確保したクァク・ミンジョンの目標は、初日のショートプログラムで足切りを食らわず、2日目のフリー演技の舞台に立つことだという。ヨナと自国の2番手の代表選手には圧倒的な実力差がある。振り返ってみても、韓国女子フィギュアの選手の名はヨナ以外思い浮かばない。
だからこそ、ヨナについて勝手な想像をめぐらせてしまう。
例えば、裕福な家庭に生まれた子だろうとか。韓国では'88年のソウル五輪を契機とした経済成長の後、子どもにコストのかかる習い事をさせる家庭が増えた。現にヨーロッパの音楽大学では韓国人留学生が数でも実力でも日本人留学生を圧倒しているのだという。
あるいは、「壮絶な叩き上げ」パターンも想像できる。ヨナの母はかなりのステージママだということは、日本にいても情報がそれなりに伝わってくる。さらにヨナの生まれ故郷であり、17歳まで生活拠点にしてきた地名が「軍浦」という聞きなれないものであると知ったとき、かなりの田舎町を想像した。ここから、とんでもない苦労や貧しさを経て這い上がってきた存在だと。これは勝手に浅田真央の対立軸としてのイメージが膨らんだゆえの想像なのかもしれない。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Keijiro Kai