桜花賞勝ち馬はなぜ“人気の盲点”になっていたのか？

　さて、そのウォーターナビレラをゴール寸前、ハナ差かわして桜の女王の座についたのがスターズオンアース（牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎）だ。

　同馬は単勝14.5倍の7番人気。リーディングジョッキーの川田将雅騎手を背に迎えていたが、ここまでの戦績が5戦して未勝利戦の1勝のみ。近二走はフェアリーSとクイーンCでいずれも2着。更に遡って三走前の赤松賞では3着に敗れていたが、それらで先着を許した馬達が皆、ここに名を連ねていた事もあり、高い評価は得ていなかった。

　しかし、先述した近二走がいずれもモタれる競馬でありながら勝ち馬とは僅か0秒1差。内容的にはむしろ評価出来る競馬ぶりだったのだから人気の盲点になっていた感はある。

　そして、実際に桜花賞では力強い競馬を披露した。元々スタートは上手で好位で流れに乗れるこの馬としては、序盤から押しながらも中団より後ろという競馬は決して好材料とは思えなかった。4コーナーでもまだ後方の馬群の中でモマれ、正直、万事休すかと見えた。しかし、直線では他馬と接触しながらも馬群を割って進出。最後は僅かハナ差といえ先頭でゴールを駆け抜けたのだから大したモノ。終いのしっかりしていたこの競馬ぶりなら距離が延びても良さそうで、2冠奪取の可能性も大いにありそうだ。

　ちなみに同日に行われた忘れな草賞（3歳牝馬、オープン、芝2000メートル）では同じ川田騎手騎乗のアートハウス（牝3歳、栗東・中内田充正厩舎）が楽な手応えのまま2着馬を3馬身千切って快勝しており、果たして樫の女王決定戦で鞍上はどちらを選ぶのかも気になるところだろう。

桜花賞と同日に行われた忘れな草賞を快勝したアートハウス　©Satoshi Hiramatsu

　他では4着だったサークルオブライフ（牝3歳、美浦・国枝栄厩舎）の脚が目立った。16番枠で常に外を回らされたにもかかわらずゴール直前の脚は7着のベルクレスタ（牝3歳、栗東・須貝尚介厩舎）と共に目を引いた。上がり3ハロンの33秒3というラップは出走18頭の中でも最速で、阪神ジュベナイルフィリーズを勝って2歳女王になった実力の片鱗は見せたと言って良いだろう。オークスでの巻き返しが充分にありそうだ。

皐月賞ジオグリフも“直接対決での敗北”がカギだった

　1週間後の17日、中山競馬場の芝2000メートルで行われた皐月賞も戦前の予想通りの混戦らしい結果が待っていた。

　そんな中、1、2着となったのはいずれも美浦・木村哲也調教師が管理する牡馬。すなわちジオグリフとイクイノックスだ。共に外枠（前者が18頭立ての14番、後者は18番）からスタートを切って道中は中団より少し前の位置を追走。前半60秒2の流れに上手に乗った。

　3～4コーナーで先に動いたのはC・ルメール騎手騎乗のイクイノックス。それをマークするように福永祐一騎手操るジオグリフがすぐ外から一緒に上がって行った。

　直線ではイクイノックスが先に抜け出し、上り坂で一旦は差を広げにかかったが、ラスト100メートルでジオグリフのエンジンに火が点ると、一気の伸び。あっさりとイクイノックスをかわして先頭でゴールインとなった。

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