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長谷川、山中も認める井上の怪物性。
「10点満点で、全てが9点以上」
posted2017/01/27 16:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takashi Iga
Number920号「ボクシング総力特集 最強は誰だ」で実現した世界3階級制覇王者で昨年12月に引退を発表した長谷川穂積氏とWBC世界バンタム級王者で、11度の防衛記録を更新中の「神の左」山中慎介の対談。普段から親交のある2人だが、対談という形で互いの言葉をぶつけ合うのは初めてのことだという。
ボクシングファン必読の“対戦”は、昨年12月30日夜に行われた。この日は、WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥が、元WBA世界同級王者・河野公平を6回1分1秒、TKO勝ちで下し、4度目の防衛に成功。6回に強烈なカウンターの左フックでダウンを奪うと、再開後、一気の連打。2度目のダウンを奪ったところでレフェリーが試合を止める完勝だった。
長谷川、山中両氏とも、テレビ番組の解説者としてこの試合をリングサイドで生観戦。対談の始まりは自然と、その日の“怪物”の戦いぶりを語り合うところから始まった。
「ボクサーの理想としては圧倒的に勝つのが一番」
――まず、今日の井上尚弥選手の試合を見て、どんな印象を持ちましたか?
長谷川 一言でいうと強いです。全部が総合点以上。10点満点で言えば、9点以上です。ボクシングは、パンチ力、スピード、テクニック、冷静さ、最後に勇気。この5つを全部持っている人間が強いんです。もちろんプロのボクサーならある程度その5つを持ってはいるんですけど、その全部の平均点が9以上あるというのは……。だから強いんですよ。
――山中さんはどう思いましたか?
山中 いや、強いです。自分自身のスタイルは左ストレートが中心なんですね。(井上のように)いろんなパンチの種類があって、その全部に威力があるというのは見ていて本当にうらやましいですし、魅力的ですよ。
長谷川 (井上選手の魅力は)やっぱり圧倒的な強さ。(もちろん、その強さを見たいという人もこれからさらに増えるだろうけど、)強すぎるから、逆に負けるところが見たいという人も増えてくるんじゃないかな。例えばフロイド・メイウェザーもそうやけど、強すぎる選手というのは、決してその選手が「憎い」わけじゃないけど、負けるところを見たい。でもやっぱり勝つというかね。それもまたボクサーの一つの魅力じゃないですか。
山中 人を惹きつけるという意味では、(相手と)打ち合って、倒し倒されという接戦をするのが正直一番ウケがいいと思う。けど、やっぱりボクサーの理想としては圧倒的に勝つのが一番ですよね。もっと理想を言えば、(オマール・)ナルバエスを倒した時(2014年12月30日WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ。井上が2ラウンドKO勝ち)ぐらいの圧勝をボクサーみんなしたいはずですね。