盗塁を刺すために谷繁が重要視する「3.2秒台」。

「ピッチャーが投球モーションに入ってからセカンドにボールが到達するまでのタイムが最低でも3.2秒台じゃないと、足が速い選手をアウトにできません。逆に言えば、そのくらいのタイムで投げられれば、多少、モーションを盗まれても間一髪でアウトにできる、ということです。ピッチャーなら遅くても1.3秒以内でキャッチャーに投げ、キャッチャーは2秒以内でセカンドまで投げることが大前提。それ以上の時間がかかってしまうと、盗塁を刺すのはまず無理ですから」

　捕手に関してはリードという絶対的な作業が戦況に大きく左右されるため、ランナーにばかり気を取られてはいけない。

　それでも、「巨人の足を封じる」ことだけを考慮すれば、「3.2秒」というタイムを重要視しても損はないだろう。むしろ巨人戦では、クイックを多用したり、セカンドまでの送球が速いキャッチャーを起用するくらい極端な戦術を用いることも、時には必要ではないだろうか。

阿部、村田といったクリーンナップもバント練習をしていた！

　ただ、足を封じたとしても、巨人はバントという小技も駆使することができる。

　昨年、チーム関係者はこのように語っていたものだ。

「打線の上位を任される選手だけではなく、村田（修一）などクリーンナップの選手もバント練習をしていました。どの打順でもしっかり送れたのが大きかった」

　バント総数はリーグ3位の134。チームトップの26犠打を記録した藤村大介を含めて、5人も2ケタを越えている。さらには、阿部、村田、ボウカーといった中軸ですら各2個ずつ決めていることからも、長打だけに頼らない繋ぎの打線が機能していたことになる。

　裏を返せば、他球団はそれを許してしまったのだ。

　仁志氏は、バントに対する守備側の意識をこう指摘したことがある。

「最近、簡単にバントをさせてしまうバッテリーが多い印象があるんですよね。『バントの構えをしているから真っ直ぐを投げましょう』というか、そういった決め事があるんじゃないか、と思ってしまうくらい単純な攻め方しかしていない。少しでも変化球を織り交ぜるなど、バントに対する配球を考えただけでも失敗させる確率は上がるはずなんです」

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