日本テニスの未来が託された試合だった。8月に行われた全米オープンの予選決勝。錦織圭選手、36歳。坂本怜選手、20歳。結果は6-4、7-6で坂本が勝利を収め、初めて本戦への切符を手にした。雨で一日順延となったこの試合。僕はニューヨークの空港から荷物を持ったまま会場へ直行した。試合を見終えた時、言いたいことがありすぎて、逆に言葉が出てこなかった。ただ、一つだけ、真っ先に浮かんだ。「圭、ありがとう」。僕には、この試合が単なる世代交代には見えなかった。継承。そんな言葉が一番しっくりきた。
第1セットは圭が2-0と先行した。しかし、そこから怜が4ゲームを連取する。驚いたのは、この半年で怜のテニスが明らかに変わっていたことだ。以前はベースラインの後ろでストロークする場面が多かった。ところがこの日は下がらない。圭は相手のボールを利用しながら時間を奪い、リズムをつくるテニスを得意としてきた。ところが怜は、その時間を与えなかった。
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photograph by Tamon Matsuzono
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