いろんな可能性を感じさせるゴールデンウイークとなった。4月30日にプロ初となるホームランを放って、お立ち台に上がった。5月2日にはファームのゲームで2番手としてマウンドへ上がり、1イニングを2失点ながら公式戦初登板を果たす。そして5月3日には一軍のゲームに外野手として出場、ライトからのバックホームで二塁ランナーを刺した。すべてをひとりでこなしたファイターズの二刀流ルーキー、矢澤宏太は、打って投げて守って、大谷翔平がこのチームで切り拓いた道を進む未来を想像させた。
「僕の中では大谷選手のことは意識していません。僕は僕の野球をやっているだけですから……ただ大谷選手がいてくれたからこそ、僕にどっちもやらせようという選択肢があった。そのことには感謝しています」
日体大3年のときから、矢澤は土曜にピッチャーとして先発、バッターとしては土曜も日曜も打線の中軸を担った。ピッチャーとバッターの両方をやることは小学校のときから当たり前で、ゆったりと振りかぶって投げる内海哲也のマネをして、小笠原道大のフルスイングに憧れた。
「とにかく毎試合、出たい。ピッチャーとしてもバッターとしても、全試合に出られるレベルでありたいんです。試合に出られればどちらでもいい。三振を取れるピッチャーとして、出塁率が高くて2ケタのホームランが打てるバッターとして、チームのパーツの一つになれるならどちらで出てもいいと思っています」
プロで二刀流として生きていくためには、投打それぞれの才能に恵まれていることは前提でしかない。2つの才能をどう両立させ、シーズンでどう接着させていくかというところに難しさがある。矢澤は言った。
「たとえばバッティングのフォームを直そうと思いついても、それがピッチャーとしての動作に悪影響を与えないかということは、常に考えなければなりません。そこを自分で判断していく難しさは感じています」
ピッチャーのときは冷静で、バッターだと野性的なキャラになるという矢澤に、打つことと投げることのどちらが好きなのか、訊いてみた。
「どっちもあんまり得意じゃないからなぁ(笑)。でも得意じゃないからこそ、どっちにもまだまだ伸びしろがあるというふうに思っています」