呼ばれんなあ。
エイバルの目抜き通りを一本入ったところにある古びた中華料理屋で、乾貴士が呟いたことがあった。
季節は冬で、路地にはバスク山間部の寒風が吹いていた。それはある試合後のことで、乾は攻撃に守備にサイドを何度も上下し、前線ではキレのあるドリブルを見せていた。
先発で出場し続けていたこともあり、代表招集を求める声は大きくなっていた。なぜ呼ばれないのかと、何度もエイバルファンに尋ねられた。
「乾が代表に呼ばれないなんて、日本代表はすごいチームなんだね」
皮肉の裏側にあったのは、小さな田舎のクラブで必死に走る乾への愛情だろう。
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photograph by Getty Images