史上初の3連覇、そしてロンドンへ唯一の懸念材料は、
国内のみならず、世界でもライバルのいない状況。
勝負の時に向け、何が彼を奮い立たせるのか。
社会人となり、新たな環境に身を置く孤高のメダリストに心境を訊いた。
午前8時半、起床。
「まずシャワーを浴びて、ボーっとして。それから練習に行きます」
朝食は、摂らない。
チョコプリン1個で銀メダルを取ったと驚かれた北京五輪のころから、食の細さは変わっていない。
「午前中は1時間半ほど練習しますけど、昼も最近は食べないですねぇ。午後は2時半から3時間くらい練習して、終わったら会社の施設で晩ご飯を食べてから帰ります。1日1食? そうですね。朝昼食べないで練習するのに、どこからエネルギーが出てるのか、僕にもわからないですけど」
ロンドン五輪の全競技中、金メダルに最も近い選手の一人として世界が注目する22歳の青年は、そう語りながら、拍子抜けするほど屈託のない笑みを浮かべた。
ただし、北京五輪のころに見せていたあどけなさの残る顔には、この3年間で逞しさが上乗せされている。身長160cm、体重54kg、体脂肪率は2~3%。色白で透き通った皮膚の奥に限りなく良質の筋肉を閉じ込めた身体は、食に対する無頓着ぶりがまったく信じられないほどの弾力を秘めた質感を漂わせていた。
10月に東京で開催される世界選手権では、前人未到の3連覇に挑む。
内村航平が世に知られるようになったのは19歳で出た'08年8月の北京五輪からだ。それまでは無名の大学生だったが、五輪代表選考会で当時のエース冨田洋之に次いで個人総合で2位になると、北京では団体総合銀メダルに貢献するとともに個人総合でも銀メダルを獲得した。彗星がごとくとは、まさに彼のためにあるような表現だった。
その後はトントン拍子だった。翌'09年世界選手権で個人総合金メダルに輝くと、昨年の同大会では日本人初の個人総合連覇を達成。今年10月に東京で開催される同大会では、世界の誰もがなし得たことのない3連覇に挑む。北京五輪の団体総合王者で、世界選手権4連覇中の中国にも個人総合のライバルはおらず、現時点では敵なしと目されている。
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