#769
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<蘇る死闘2010> 「鉄壁」の記憶。~中澤佑二が語る闘莉王との絆~

2011/01/05
名コンビはカメルーンのエース、エトーをシュート1本に抑えた
4試合を2失点。日本代表は直前の親善試合とは打って変わり、W杯本番で
磐石の守備を見せた。その屋台骨を支えたのは2人の屈強なセンターバック。見事な連係の源泉となった相棒への強固な信頼を、初戦・カメルーン戦を
もとに、中澤が回想した。

「闘莉王のほうが強いっすよ!」

 謙遜も混じっているのだろうが、中澤佑二は少しばかり大袈裟な口調で言った。

「全然です。僕はガチャーンって跳ね返すことがあんまり得意じゃない。でも、闘莉王は相手ごと吹き飛ばしてガチャーンってできるんです。体も強いし、自分のストロングポイントがそこだって分かってる。僕のヘディングってどちらかというと相手を抑えつつ跳んで触る感じなので。線が細いんですよね」

 W杯が終わり、はや半年。久しぶりに口にする南アフリカの話題に、中澤は当時の記憶を必死に手繰り寄せていた。突然の戦術変更。奇跡的な快進撃。チームメートとの絆。それら大きなファクターは今でも脳裏に深く焼き付いている。中でも相棒の存在は忘れられない。田中マルクス闘莉王だ。

 4試合でわずか2失点。うち1点はPK絡みで、日本はまともに崩されての失点がない。大会後、アーセン・ベンゲルは真っ先にセンターバックを褒め称えた。中澤と闘莉王。彼らほど世界と互角以上に渡り合えたコンビはいまだかつて日本に存在しなかった。

 ここで単純な疑問が浮かび上がる。空中戦は実際、どちらが強いのか。中澤は即答した。それが冒頭のコメントだった。

「闘莉王は間違いない。あいつがいれば、後ろは大丈夫」

ゴールを決めた本田に駆け寄る中澤と闘莉王。試合前の国歌演奏の際、皆で肩を組んだのは闘莉王の発案だった

 その真偽はともかく、当時の代表チームは彼らに支えられた部分が大きい。性格やプレースタイル、サッカーに対する考え方すら正反対の2人だが、どういう訳か、両者は引かれ合い、尊重し合った。それは一枚岩のように頑強なコンビネーションであり、そのどちらか一方が欠けても同じ結果は得られていなかったに違いない。

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photograph by AFLO

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