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「へこたれずに頑張って」世界ジュニア4連覇の新星、島田麻央が憧れの坂本花織と初対談! 時代を創った女王が贈る氷上のバトン
posted2026/10/22 11:00
島田麻央が憧れの坂本花織と初対談
text by

野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Miki Fukano
――世界選手権4度優勝の坂本花織さん、そして世界ジュニア4連覇の島田麻央さん。お二人の対談は初めてですね。
島田 今日は様々なことを教わりたいです。
坂本 シニアの国際大会デビューとなった木下グループ杯、さすがの優勝でした! トリプルアクセルの跳び方も軽くなって、すごく練習したのだろうと思いました。
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島田 自分が出せる最大限の演技ができて良かったです。初戦ということで、プレッシャーなく伸び伸びできたことが良かったと思います。
――坂本さんから見て、ジュニア公式戦39連勝の島田さんはどんな選手ですか?
坂本 「負けを知らないって、どんな気持ちで試合に臨むのかな」と、思って見ていました。
島田 ジュニア時代は、「自分の演技に集中しよう」って思っていても、やっぱりどこかで「前の大会で優勝したから、今回も優勝したい」という欲が出て、練習通りには滑れないことが多かったと思います。
坂本 それでも優勝してる(笑)。
――坂本さんも世界選手権3連覇という意味で「負けを知らない」という立場を経験されているのでは?
坂本 いえ、自分はメンタルが弱くて、いつも不安いっぱいで試合に臨んでいました。麻央ちゃんは、リンクに乗った瞬間に「ピッ」ってスイッチ入る感じがします。ナショナルトレーニングセンターで練習が一緒になった時は、自分の練習を忘れて、「すごいな、この子は」と思いながら見てましたよ。
島田 ええ!? 逆に、私も花織ちゃんの練習を見てました(笑)。私も演技前は不安で、眉毛がハの字になります。でも、曲が鳴ったら割と切り替えられるタイプ。普段から緊張感を持って曲をかけて練習しているのが、活きているのかも知れません。
――お二人の練習スタイルには差があるのでしょうか?
島田 私は無理に長い時間は滑らず、集中して取り組む感じです。「今日は絶対にここまでは練習しよう」と決めても、集中力が切れたら終了するようにしてます。
坂本 一日どれくらい練習してますか?
島田 氷上は2時間半、多くて3時間です。
坂本 意外! 私は毎日4時間くらい。シニアに上がりたての頃は、もっと長く練習しても不安になっていました。
――島田さんは、短時間の中でトリプルアクセルや4回転にも取り組むのですか?
島田 はい、やります。
坂本 何歳から練習し始めましたか?
島田 トリプルアクセルは小学5年生で練習し始めて中1の終わりに着氷しました。4回転トウループは小6の3月、先生に「やってみて」って言われて、やってみたらちょっと回転足りないぐらいで降りて、その後、曲に入れて3日後に着氷しました。
坂本 全然参考にならない(笑)。私は、高校1年の時にトリプルアクセルを一度降りたのですが、左足を捻挫した時にちゃんと完治するまで治療をしなかったら、足首をまっすぐに踏み込めなくなって、出来なくなり悔しい思いをしました。
「もし2位になる日があってもそれが麻央ちゃんを強くする」
――大技を無理に入れない作戦に切り替えてからは、どのように自分を成長させていきましたか?
坂本 もともとの私は踊ることが苦手で、ジュニア時代はジャンプだけが取り柄だと思っていました。でも4回転を跳ぶロシアの選手たちが出てくると、自分の技術点には限界があるから、演技構成点を上げるしかない。そこから「どうやって表現力を伸ばそうか」と考え始めました。
島田 私も、まだ演技構成点はシニアの選手と比べて全然足りないので、これからシニアの舞台を経験して伸ばしていきたいと思っています。花織ちゃんはどうやって表現力を身につけていきましたか?
坂本 まずはいろいろな振付師さんを経験するのが大事だと思います。シニアに上がった時の振付師のブノワ・リショーさんが、段階を踏んで、表現のレパートリーを増やしてくれました。さらに様々な振付師さんが「これ合うと思う」と選んでくれる曲が全然違うジャンルで、苦手だと思った曲が得意になったり、女性らしさなど新しい表現を身につけることができました。幅広い曲にチャレンジしていくことで、麻央ちゃんにもきっかけが訪れると思います。
島田 たしかに今年のフリーは、最初は「難しそう」って感じましたが、練習するうちに、「いい曲だなあ」って思うようになりました。私も、得意な曲だけを選ぶのではなくて、いろいろなジャンルに挑戦して、表現の幅を広げてみたいです。
坂本 いろんなジャンルを経験すると、得意不得意が分かってくる。オリンピックシーズンには「意外と得意かも」と思う分野の曲と、本当に得意なプログラムを合わせる。そうすると点数が伸びるから、ぜひ。
島田 やってみます。花織ちゃんのように、ジャンプのギリギリまで踊りながら、表現の一部でジャンプを跳ぶというのがなかなかできないので、そこも目指したいです。
――いろいろな曲という意味では、島田さんは、今季のエキシビションナンバーに初挑戦のジャンルを選んだそうですね。
島田 サンリオの『KAWAII FESTIVAL』という曲を使わせていただきます。サンリオピューロランドのパレードでも使われていた曲で、私が小学生の頃、観に行っていた時の楽しい気持ちを思い出して滑りたいです。キティちゃんのイメージで作っていただいた可愛い衣装で、サンリオキャラクターの世界観を表現できたらと思っています。ハローキティは世界中の皆さんが知っているけれど、この曲でスケートした人はいないと思うので、新たな挑戦。自分のレパートリーを増やすつもりで、キティちゃんになって弾けたいと思います。
――島田さんはこれからシニアの戦いですが、世界のトップを目指して戦うというのは、どんな気持ちですか?
島田 私はどちらかといえば、すごい選手と戦えるのが嬉しいです。
坂本 私も、恐れるよりは立ち向かっていこうみたいな感じでした。ロシアの選手が3人いる時代は「表彰台独占は阻止したい」と思っていたし、そこはアスリートとして大事な部分ですね。
島田 今回の木下グループ杯でも、アレクサンドラ・イグナトワ選手の4回転ルッツを初めて生で見て、刺激をもらったからこそ、自分の4回転トウループも決められたと思います。あまりに簡単そうに跳ぶので、見ていると「自分も出来るかな」と思ってしまいました。
――ライバル選手と、大会を通して仲良くなることはありますか?
坂本 アンバー・グレン(米国)はいつも喋りかけてくれるし、練習中に手を切ったら絆創膏をすぐに出してくれますよ。あと表彰式を待ってる間に、試合の緊張が解けて喋ったことがきっかけで仲良くなる選手は多いですね。麻央ちゃんは確実に表彰台に乗ると思うので、これからいろいろな海外の選手と仲良くなれる機会がありますよ。
島田 英語を頑張ります。
坂本 ある程度の英単語を知っておけば、笑顔とボディランゲージで何とかなります! それに麻央ちゃんも、日本の選手とは試合で会ったら仲良くなりますよね。去年の全日本選手権では、私にプレゼントをくれたんです。あの時は嬉しかったです。
島田 花織ちゃんの最後の全日本選手権だったので、おしゃべりしたいなって思って。応援したいのと、私もパワーをもらいたいと思って話しかけました。けろけろけろっぴのヘアピンを着けてるのを見たことがあって、好きなのかなと思って、けろっぴのグッズを選びました。
――島田さんにとって、プレゼントを渡したほど憧れの坂本さんですが、聞いてみたいことはありますか?
島田 シニアの世界選手権は、ジュニアより更にプレッシャーがかかると思うので、その中で3連覇するメンタルをどうやってつくったのか、知りたいです。
坂本 自分は、練習での不安を全部取り除かないと、試合では出来ないタイプでした。だから、とにかく練習で不安を一つずつ潰して「これだけやったから大丈夫」と思えるまでやるというスタイルでした。
島田 私も試合に出発する前は、いろいろな不安がでてきます。私もちゃんと取り除いてから出発したいと思います。
――では改めて、世界女王からのアドバイスを。
坂本 麻央ちゃんはすでに出来ることが多すぎるので、試合については何も言うことはないです。ただ、想像はしたくはないけれど、もし2位とかになる日があっても、その悔しいっていう新たな経験が、いずれ力になって麻央ちゃんをもっと強くする。だからシニアの戦いでどんな結果であっても、へこたれずに頑張って欲しいって思います。麻央ちゃんなら大丈夫!
島田 ありがとうございます。花織ちゃんと一緒には出られないけど、花織ちゃんが立った世界選手権の舞台を経験してみたいなと思います。そして少しでもシニアらしく、お客さんに表現が伝わるような演技を目指していきたいです。
坂本 花織Kaori Sakamoto
2000年4月9日生、兵庫県出身。'22年北京五輪にてシングルで銅、団体で銀メダルを獲得。'22年から世界選手権3連覇を達成。'26年、ミラノ・コルティナ五輪では、団体、シングルともに銀メダルを獲得。世界選手権で再び優勝し、現役を退く。現在はコーチ業に就く。
島田 麻央Mao Shimada
2008年10月30日生、東京都出身。5歳でフィギュアスケートを始め11歳から木下アカデミーで指導を受ける。'22-'23シーズンからジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア選手権で4連覇。'26年9月、シニアの国際大会デビューとなる木下グループ杯で優勝。所属:木下グループ。
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