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松野明美、高橋尚子から田中智美へ。
女子マラソン選考問題は終わらない。  

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金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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photograph byKyodo News

posted2015/03/20 10:30

松野明美、高橋尚子から田中智美へ。女子マラソン選考問題は終わらない。 <Number Web> photograph by Kyodo News

大阪国際で3位に入り、世界陸上の代表に選ばれた重友梨佐。今回の騒動で最も心をいためているのはおそらく彼女本人だろう。

田中か重友か、たいへんな議論になったと想像できる。

 それぞれのマラソンレース単体で見ていくと、レースそのもので優勝し、かつナショナルチームに所属する田中選手を落選させる理由がない。

 しかし、ここで少し視点を変えてみよう。

 レース単体ではなく、下記のような日本人だけの順位で比較した一覧表で見比べてみた場合どうだろう?

横浜:(1)田中智美
大阪:(1)重友梨佐 (2)渡邊裕子
名古屋:(1)前田彩里 (2)伊藤舞

 レースでは3位だが日本人1位の重友は自己ベストタイムが2時間23分23秒、ロンドン五輪代表に選ばれた経験もあり田中より上に見えなくはない。

 レース内容も記録も良かった名古屋から2名が選出されたのは当然だが、残るは田中と重友2名のどちらにするか、たいへんな議論になったと想像できる。

有森入選、松野落選の「私を選んでください」事件。

 そもそも、女子マラソンの選考問題が最初に勃発したのは1992年のバルセロナ五輪まで遡る。確かその頃は、明確な選考基準は発表されていなかったように記憶している。

 前年の世界陸上東京大会で入賞した有森裕子選手(リクルート)が選ばれ、国内選考レースにおいて日本記録を上回る好記録で2位になった松野明美選手(ニコニコドー)が落選。

 当時、社会問題にまで発展した松野選手の「私を選んでください」事件となった。

 2004年のアテネ五輪では、前回シドニーで金メダルをとって翌年に世界記録をだした高橋尚子選手(スカイネットアジア航空)が落選して物議を醸した。

 その時は、下記のような選考基準があり、基準1で野口みずき選手(当時グローバリー)が選ばれ、基準2では、大阪国際女子マラソンで優勝した坂本直子選手(天満屋)と名古屋国際女子マラソンで優勝した土佐礼子選手(三井住友海上)が選ばれた。

1.世界陸上パリ大会でメダルを獲得した競技者の中で、男女マラソンそれぞれの日本人最上位1名を代表選手とする。

2.各選考競技会の日本人上位の競技者の中から本大会でメダル獲得または入賞が期待される競技者を選考する。

【次ページ】 「本大会で活躍が期待できる競技者」とは?

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