イタリア文化の本質を語らずして、デローザの魅力は語れない。なぜなら、他メーカーがコンピューターの数値解析や、モータースポーツの素材製法を流用するというハイテクを駆使するのに対して、デローザはあくまでも熟練の職人による手作業を基本として自転車を作り上げるからだ。自然や美術などの美しさを的確に見極める審美性、創造性豊かなモノ作りのスピリット、さらには日常を愉快に生きる人生哲学までもが、デローザの自転車に注ぎ込まれているのだ。

　出来上がったロードレーサーは、まるで美術品のように美しい。軽くしなやかな乗り心地と、ヒルクライムから高速クルージングまであらゆるセクションに対応する性能も相まって、世界中の自転車乗りを魅了する。唯一デローザの難点と言えば、トップモデルともなるとクルマが買えるほどの高価格だろう。

イタリア国外製造でもデザインや仕上げに妥協なし。

　ところが、新しくデビューした『R848』は、従来のイタリア製造から海外製造に変えることで、大幅なプライスダウンに成功したのだ。直進性、加速性、ブレーキング性、コーナーリング性に優れ、クセのない乗り心地は初心者でもフラットロードや峠道で安心して走ることができる。しかも、サイズ違いによるフレーム特性のばらつきを抑えるBIO SPテクノロジーによって、どの体格の人でも同一のポテンシャルを実感できるのが嬉しい。もちろん、海外製造だからといってデザインや仕上げに妥協はなく、デローザ本来の美しさを30万円以下で堪能することができるのだ。

　カーボン素材の特性を生かし、カラーリングやディテールにこだわったR848を、デローザ3兄弟の三男、クリスチアーノ・デローザは「デローザワールドへの水先案内人」と評価する。このR848に乗って、ぜひともデローザの情熱を体感して欲しい。