炎の一筆入魂BACK NUMBER
セ界王者のカープがCSで横綱相撲。
背景には黒田、コーチらの意識改革が。
posted2016/10/14 12:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
視点を変えると、世界は変わる。
2年ぶりに出場したクライマックスシリーズ(以下CS)での広島の戦いぶりは、どこの角度から見てもセ界王者としての貫禄があった。まさに横綱相撲を見せている。
対外試合から10日以上空き、懸念された実戦勘など関係なかった。初戦から、独走したシーズンと変わらぬ広島野球であっという間に日本シリーズ進出へ王手をかけた。
投げては、初戦先発のクリス・ジョンソンが散発3安打完封。二塁を踏ませない圧巻の投球だった。
2戦目も野村祐輔から今村猛、ジェイ・ジャクソン、中崎翔太とつなぐリレーで、2試合続けて零封した。
打っても広島の顔となった田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の同学年「タナキクマル」トリオが塁上をにぎわし、試合の主導権を掌握した。
昨季の5勝から一気に16勝投手となった野村。
シーズン同様、CSも変わらぬ戦いができている裏には、投打ともに視点の変化がある。
ファーストステージで巨人を破ったDeNA打線の勢いを完全に止めたのはジョンソンだ。
内角を大胆に攻め、両サイドを広く使った投球で、各打者の調子を狂わせた。その流れに乗った野村も内外角を丁寧に突いた。内角の残像があるから、より外角球も生きる。そして緩いチェンジアップで前後の幅を加えることで、DeNA打線に的を絞らせなかった。
野村は昨季の5勝から今季、16勝を挙げるなど覚醒した。最多勝に加え、最高勝率の二冠王となった。
野村の成長を促した背景には、黒田博樹の存在がある。
「いいシュートを持っている。それを生かすためにももっと内角を使った方がいい」
入団時から制球力を武器とし、外角球の出し入れを得意としていた。だが、外角中心の投球はときに自分を苦しめることもあった。内角を使う、見せる、残像を残すことで、野村の投球は見違えるようになった。