#1060
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[特別エッセイ]青の時代

2022/10/06

 十数年前、棋士が麻雀ばかり打っていた時期があって、それは三、四年つづいた。今も昔も麻雀は若い棋士の必修課目のようなものである。なにより皆若く、ヒマとエネルギーを持て余して、ひたすら自由を求めていた。千葉幸生、村中秀史、伊藤真吾、今の将棋界を支える中核世代が、新宿西口の当時はまだ珍しかった禁煙雀荘にたむろしていた。死んだ天野貴元がいた。私は終った後、酒を奢る役だった。

 もっとも参加が多かったのは広瀬章人だった。週に一、二回行われる定例会に行くと、いつも口をへの字にしながら打ち、和ると満面の笑みになる。だが、リーチをする時に将棋を指すような手つきで牌を横に曲げていた。

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photograph by Takayuki Ino(Illustration)

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