「保科コーチに意識の壁を作るなと言われた」

　くしくも創部100周年を迎えた慶應義塾大学体育会競走部でも今年、箱根駅伝プロジェクトが発足。新たに経験豊富な保科光作が長距離専任コーチに就任し、チームは1994年以来の本選出場を目指す改革の真っただ中にある。

「もう1つ大きかったのは、保科コーチに意識の壁を作るなと言われたこと。こんなきつい練習ができるわけがない、こんなに走り込めるわけがない、そういう意識を取っ払えば、絶対無理だろうと思われた練習でも意外とできてしまう。過去の実績で遠く及ばなかった選手相手でも、今は倒してやろうと思えますね」

　念願だった関東インカレ出場も果たし、先の箱根駅伝予選会ではチームで唯一の20km61分切りを達成した。もはや他校のエースと比べても実力で引けを取らず、関東学生連合チームではエース級の活躍が期待される。

　本選に出られた際の目標について聞くと、こんな頼もしい言葉が返ってきた。

「陸上をやっているというと、なんで慶應は箱根に出ないのって必ず言われるんですよ。だからまずは僕が個人で出場して、競走部の歴史を次へつなぎたい。注目してもらえる区間で走りたいです」

　学生連合チームの登録メンバー16名は、11月末の10000ｍ記録挑戦競技会などの結果を経て、本選に出場する10名が決まる。

　ここまでたどり着いた過程は三者三様だが、3人がそれぞれに熱い思いを抱えていることはよくわかった。

　校名の書かれていない真っ白な襷をつなぐ彼らの奮闘にも、ぜひ注目してもらいたい。