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広島、悲願のJ初優勝ドキュメント。
ビッグアーチを揺らした躍動の90分。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

PROFILE

photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT

posted2012/11/26 16:30

広島、悲願のJ初優勝ドキュメント。ビッグアーチを揺らした躍動の90分。<Number Web> photograph by Akihiro Sugimoto/AFLO SPORT

Jリーグ発足時の10クラブの中で唯一、3大タイトルに縁がなかったサンフレッチェ広島。1994年のファーストステージ優勝の際の主力選手だった森保一が、監督としてチームに初の年間王者の栄誉をもたらした。

18年ぶりに“3万人超え”を記録した大観衆の前で。

  雄叫びを上げるように壇上に立った森保一監督は、サポーターに対する感謝の気持ちを何度も口にし、持てる力を尽くして戦った選手たちを称えた。興奮の中で行なわれたセレモニーを終えて、ようやくミックスゾーンに現れた彼の表情は終始緩んでいた。

「ベンチから選手たちが走り出したのを見て、優勝したんだと知りました。1試合1試合経験を積んで、学びながら成長してきたチームだと思います。プレッシャーに打ち勝ってくれたことが何より嬉しい。僕らは1日1日を一生懸命やることしかできない。とにかく全力でシーズンを戦ってきた結果だと思います」

  前指揮官ペトロビッチの苦言が愛のムチとなり、ファーストステージを制した'94年以来18年ぶりの“3万人超え”を記録したビッグアーチの声援が後押しとなったのなら、これほどドラマチックなストーリーはない。そんな演出を盛り上げるように、試合前には上空に七色の“ビッグアーチ”が描かれ、弱く降り続いた雨も試合終了と同時にやんだ。

「監督1年目の僕に何ができるのか。僕自身『そこに答えはないだろう』といつも自分に言い聞かせていました。ただチームにとって必要なことを自分の中で自信を持ってやり続ける。チームを向上させることを考え、ベストを尽くしてやろうと思ってやってきました」

  監督1年目で、自身が生まれ育ったクラブに悲願のJ1年間優勝をもたらした青年監督は、選手たちに担がれて7度宙を舞った。「選手たちに優勝の味を知ってほしい」。そう言い続けてきた指揮官の思いが実った瞬間だった。

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