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ヘルメットを4度も椅子や物置台に…佐藤輝明が“真の四番”になった夜《タイガースを優勝へ導いた三冠王を徹底解剖》

2026/10/14
グラウンドでは滅多に感情を出さない男が、闘志をむき出しにした2日間があった。間近にいた同僚と師匠が、主砲の変貌を明かす。(原題:[優勝を引き寄せたスピリット]佐藤輝明「真の四番になった夜」)

 1歩、2歩、3歩……。

 男は無表情のまま、マウンド方向へ歩き始めた。ゆったりとした足取りがむしろ迫力を増幅させる。その全身からは明らかに怒りが溢れ出ていた。

 7月18日のマツダスタジアム。うだるような蒸し暑さが体を蝕む熱帯夜だった。1点を追う8回表1死走者なし。阪神の四番は珍しく感情をあらわにした。

 2ストライクからの3球目。長身左腕テイラー・ハーンの150km直球に胸元をえぐられた。捕手もミットに当てられないすっぽ抜け。間一髪で腰を引けていなければ、脇腹に剛速球を受けていた。思わずバットを放り投げ、マウンド側に体を向けた。4歩進んだところでグッとこらえて切り返したが、対戦相手への情動を滅多に大っぴらにしない男にしては、極めて稀なシーンであった。

 なぜ明確に“意思表示”をしたのか。

 佐藤輝明はそれから2カ月が過ぎたシーズン最終盤、「う~ん……ちょっと難しいですけど」と慎重に言葉を選びながら、偽らざる胸中を素直に明かしている。

「あそこで何も感情を出さないっていうこともできたと思うんですけど……。やっぱり相手チームに伝えないといけないっていうのはあったので。そういう意味では感情を出すというか、そういうのも必要だったんじゃないかなって思います」

 捕手は外角低めいっぱいに構えていた。故意で体付近に投げ込んだわけではないと、佐藤も理解していたはずだ。それでも四番はあえて感情をむき出しにした。多くを語らなくても、その理由は容易に想像できた。

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photograph by Hideki Sugiyama

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