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[ゴールデンボーイ黄昏の光]ホルヘ・リナレス「あと2戦、まだ頂点へ」

2022/06/18
1985年8月22日、ベネズエラ生まれ。'02年に来日し、同年12月にプロデビュー。'07年に初世界タイトル(WBC世界フェザー級)、'08年に2階級制覇(WBC世界スーパーフェザー級)、'14年に3階級制覇(WBC世界ライト級)達成。直近2戦は連敗。173cm。54戦47勝(29KO)7敗
今年2月、ロシアの地でキャリア7敗目を喫した。17歳の時にベネズエラから来日し、今夏で37歳。その去就が注目される中、「また頑張るよ」と現役続行を宣言した。なぜ、戦い続けるのか――。円熟の天才ボクサーは明確なビジョンを持っていた。

“エル・ニーニョ・デ・オロ(黄金の少年)”と呼ばれていた頃、夢は4階級制覇だった。

「言ってたねえ、そんなこと」

 もうすぐ37歳になるかつての“ニーニョ(少年)”は、髭に覆われた精悍な顔を綻ばせた。

「勝ったり負けたりだったけど、そんなに悪いボクシング人生じゃなかったと思うよ。圧倒的に勝ったことも、1ラウンドで無様に負けたこともあった。でも、3階級王者になることはできたし、ある程度、ボクシング界への貢献もできたんじゃないかな」

 '22年夏現在、ホルヘ・ルイス・リナレス・パレンシアの腰に巻かれるベルトはない。この2月には敵地に乗り込みザウル・アブドゥラエフというロシア人ボクサーと戦い、最終ラウンドにTKO負けを喫した。

「久しぶりの試合だったんで、相手との距離感やタイミングに明らかな狂いはあったんだけど、最終ラウンドが始まった段階で、判定に行けば余裕で勝てると思ってたし、いい形で試合を終えようとも思ってた。で、カウンターで最後を締めようと狙ってたら、逆にカウンターをもらってしまった」

 敗北はいつも、彼を打ちのめそうとする。昨年5月、ラスベガスで開催されたWBC世界ライト級タイトルマッチでデビン・ヘイニーに判定負けを喫していたリナレスにとって、これは50戦を超えるキャリアの中で2度目となる連敗だった。

 だが、'09年10月10日、ファン・カルロス・サルガドに1ラウンド1分13秒TKO負けの屈辱を味わい、パーフェクト・レコードに初めて傷をつけられた時でさえ明るく振る舞っていたという彼は、挫折がまき散らす毒をまたしても克服した。

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photograph by Takuya Sugiyama

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