日焼けした顔に、充実感が溢れていた。アリゾナ州スコッツデール。ダイヤモンドバックスのマイナーキャンプで汗を流す吉川峻平は、屈託のない笑顔で、数週間前にスタートしたばかりの新生活を振り返った。
「毎日が楽しいです。2月はアッという間。気が付いたら3月に入っていました」
心身ともに完全にリセットしていた。昨年、ダイヤモンドバックスとの交渉過程で、日本野球連盟の規約に抵触していたことが判明。代表入りしていたアジア大会への出場を辞退した。その後、登録資格を剥奪され、事実上の「永久追放」となる処分を受けた。将来帰国する場合、2年間は日本のプロ球団と契約できない「田澤ルール」が適用される立場でもあり、厳しい逆風の中、太平洋を渡った。それほど、腹を括っていた。関大時代に日本代表に選出されたほか、社会人パナソニックではエースとして都市対抗などで活躍。昨年のドラフトでは、上位指名されることが確実視されていた。日本でプロ入りしていれば、環境や金銭面だけでなく、華やかなプロ1年目を迎えられたことをイメージしても不思議ではない。だが、吉川の考え方は違った。
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photograph by KYODO