この1冊は小さくささやかな紙束だ。けれど、本書はサッカーとレイシズムの問題に一石を投じる、勇気ある反差別の書である。
2013年7月28日、日韓がソウルで対戦した東アジアカップのスタンドで、数分間だけ巨大な旭日旗が掲げられた。一方、相対する韓国側のゴール裏2階席には、安重根らの肖像幕と「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングルで書かれた横断幕が。日本と韓国、双方のナショナリズムを象徴するアイコンの応酬は試合結果以上に話題となり、日韓両政府まで言及する事件になった。
著者の清義明は、その現場にいた。だから、実際の空気感を書ける。それだけではない。旭日旗を持ち込んだ「C」なる人物が、どんな心持ちでそれを実行したのかを直接本人と語りながらレポートし、事件の根源をあぶり出そうとする。
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photograph by Wataru Sato