「堅守」というスタイルの中で、その存在感は急激に増した。
黙々とチームを支え続ける男が、「自分の役割」を語る。
陰のMVPと言っても過言ではない。
カメルーン戦では、エトーなど内に入ってくる選手のスペースを埋め、ルーズボールを拾いまくって勝利に貢献した。オランダ戦ではスナイデルをほとんど自由にさせず、危険なゾーンから追い払った。4-1-4-1のシステムで中盤の底を担う「アンカー」というポジションは、地味ながら、責任は滅法重い。敵を追いかけ、危険なスペースを埋め、前に出る。
南アフリカで阿部勇樹は、その役割をしっかりと果たしている。
当初、阿部はボランチ、あるいはセンターバックのサブ的存在だった。5月の韓国戦に敗れた後、岡田監督はダブルボランチの後ろにアンカーを置くことを検討したが、適任者としてまず考えていたのは、稲本潤一だった。ところが、稲本はケガで出遅れた。そこで阿部に出番が回ってきたのだ。つづくイングランド戦、敗れはしたものの、阿部の守備における貢献度は非常に高かった。それ以降、日本の「堅守」の中核を成す存在として、欠かせない選手になっていった。
「イングランド戦に出るって聞いた時は、嬉しいでも、チャンスが来たという感じでもなかった。いつ出番が来てもいいように準備だけはしていたんで、報われたという感じですかね。レッズでもボランチをやっているし、守備が70%、攻撃が30%で役割はちょっと変わるけど、仕事は変わらない。だから、違和感はないですよ。一番、気を付けなければならないのは、自分がDFラインに吸収されてしまうこと。僕が下がれば5バックになるし、DFラインの前のスペースもケアできなくなってしまう。だから、どれだけ押し上げることができるか。(中澤)佑二さんや闘莉王と声を掛け合いながら、距離感を大切にして、後は自分の感覚でやっていこうと思っています」
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