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錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!
プロ転向から2015年全豪OPまで。

posted2015/01/20 10:30

 
錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!プロ転向から2015年全豪OPまで。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)

ブリスベン国際での25歳の錦織と、ウイルソンと初めて契約した11歳の時の錦織。

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河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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Action Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)

 17歳でプロ転向した錦織圭。翌2008年には、早くもデルレイビーチ国際選手権でツアー初優勝を成し遂げた。日本人の男子選手がATPツアーを制したのは、その16年前の松岡修造以来、2人目。衝撃のニュースに日本中が沸き立った。

  そして記憶に新しい、2014年全米オープン。ついに錦織はグランドスラムの決勝戦に到達する。ツアー初Vは日本で
のビッグニュースだったが、今度は世界のビッグニュースとして“Kei Nishikori”の名前が轟いた。

  前回記事に引き続き、ウイルソンで長年錦織の担当をしている道場滋氏にお話を伺いながら、プロ入り後の錦織の全ラケットを写真とともに紹介する。

●n TOUR II(エヌ・ツアー・ツー)

 錦織がプロへ転向した際のラケットがこれ。フレームの中に高密度の泡状ナノ粒子を封入した「ナノ・フォーム」テクノロジーにより、ラケット面の安定性やパワーを増大させている。

 また、グロメット(ストリングホールに入っている樹脂製の小さなチューブ)の穴が通常より大きい「ダブル・ホール」テクノロジーも搭載。打球時のストリングの可動域が広がるので、柔らかい打球感が得られる。錦織が少年時代に使っていた「HYPER HAMMER 5.3」と「6.3」に搭載されていた「パワー・ホール」テクノロジーと同じ原理である。

「『n TOUR II』へのモデルチェンジで新たにダブル・ホールが採用されたのを知った時、圭君はきっとこのラケットを気に入るはずだと確信していました。前の『n TOUR』の時、もっと柔らかい打球感が欲しいとしきりに言ってましたから。実際、試打してすぐ『いいですね』という反応が返ってきました」(道場氏)

 そして前モデル「n TOUR」の項で道場氏が触れていた通り、グリップ部を上に伸ばしたため、「W」のブランドロゴが消えている。

 さらにストリングにも大きな変更が。前年までポリエステル系のモノフィラメント(単一繊維)・ストリングをフェイス全面に貼っていたが、このモデルから縦にポリエステル系モノフィラメント、横にナチュラル(牛腸)と、異なるストリングを組み合わせて張るようになったのだ。

「プロ転向以降の圭君のストリングの張り上がりテンションは平均で57ポンド程度ですが、他の選手と同様、その日の気候や対戦相手、大会のサーフェスによって毎回微調整しています」(道場氏)

 ただ彼は、他選手がまずやらないストリングの張り方をしている。普通はフェイス面の形が崩れないよう、縦ストリングを少し強めのテンションで張る。横より縦のストリングの方が長い分、フェイス面の縦方向にかかる力が弱くなるのを修正するためだ。そうやってオリジナルのフェイス形状を保つのである。

「でも圭君は、逆に横ストリングの方を強く張り、フェイス面をあえて少し縦長に変形させるんです。そうすることで、スイートスポットが縦に伸びます。彼は少年時代から、通常のスイートスポットよりも少し先端寄りでボールを捉えた時も、パワーの乗ったショットを打ちたいという、独特の感覚を持っていました」(道場氏)

●[K] TOUR(ケー・ツアー)

 素材のカロファイト・ブラックとは、カーボン繊維にシリコン・オキサイドだけでなく、カーボン・ブラック・ナノ・ファイバーをさらに配合したnCodedの進化形。

「ラケット名の頭の[K]は、当時のウイルソンのラケットに使われていたテクノロジー群の総称で、残念ながら圭君のイニシャルから取られたわけではありません(笑)。ただ2008年版から日本市場向けの当社カタログには、彼の写真が載るようになりました。我が国のテニス界で、彼の存在がそれだけ認知されてきたということです。そしてこのモデルから一般バージョンとは別に、圭君本人が使っているのと同じ重さや重量バランス、グリップの長さにし、例の“Kei”のロゴを入れた『ケイスペック』というスペシャルバージョンを、日本市場でのみ数量限定発売するようになりました」(道場氏)

【次ページ】 長い負傷ブランクの間も着々と進化していたラケット。

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