ブラジルW杯通信BACK NUMBER
戦術は、攻めも守りも「1対1」。
アルゼンチンが誇る最強の“矛と盾”。
posted2014/07/08 11:15
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Getty Images
ブラジル対ドイツ、オランダ対アルゼンチン――。
予定調和に近い顔ぶれがそろった4強の激突はいろいろな意味で興味深い。超大国のブランド力は変わっていないが、スタイルが大きく様変わりしている。ブラジルとドイツに「おらが国のサッカー」なんて問うのは、もはやナンセンスという感じだ。ひょっとすると、ブラジルとドイツのユニフォームを交換して試合をさせても、30年前の人たちは違和感なく受け入れそうな気がする。
ブラジルっぽいドイツと、ドイツっぽいブラジル。
何だか前回のコラムで同じことを書いたような気もするが……。でも本当にそんな雰囲気を感じてしまう。泥臭いブラジルとお洒落なドイツ。もう「ドイツはどいつだ?」なんて、くだらないことを口走りそうなカードだ。いやオランダだって、いつもとは毛色が違う。ポゼッション原理主義を手放し、理詰めのリアリズムで勝ちに徹している。仮に優勝でもしたら、ご意見番のヨハン・クライフはいったい、何を言い出すことやら。いまから妙な期待感がある。
アルゼンチンに流れる、相反する2つの思想。
つかみどころがないのはアルゼンチンだろうか。確たる組織があるのかないのか。いや、そもそも強いのか、弱いのか。準々決勝で敗れ去ったベルギーのマルク・ビルモッツ監督には「ごく一般的なチーム」と切り捨てられ、同じベルギーのDFダニエル・ファンブイテンには「ドイツならば簡単に倒せる」とまで言われたそうだ。まあ、ファンブイテンの場合はドイツの公共放送局に語ったものだから、リップサービスと言えなくもないが……。
優勝劣敗はともかく、今大会のアルゼンチンは極めてアルゼンチンらしく映る。もっとも、それは「裏の顔」だ。
アルゼンチンのサッカーとは、まるで1枚のコインのように裏と表がある。矛と盾、アクションとリアクションという、相反する2つの思想、哲学が拮抗しているところが興味深い。ワールドカップでは1978年と1986年の二度優勝しているが、それぞれのチームカラーはまるで違っている。2人の指揮官の哲学が、大きく異なっていたからだ。