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ドイツに声援を送ったブラジル人たち。
歴史的大敗で傷ついた王国の“誇り”。 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2014/07/09 11:35

ドイツに声援を送ったブラジル人たち。歴史的大敗で傷ついた王国の“誇り”。<Number Web> photograph by Getty Images

大会前は不安視されながらも、ここまで安定したセーブでチームを救ってきたジュリオ・セザルだったが、押し寄せるドイツの猛攻になす術はなかった。ネイマールとチアゴ・シウバがいたら、試合の結果は変わっていたのだろうか。

 キックオフからわずかに11分後、ブラジルがペースをつかみかけていた中でドイツが得た最初の右CKだった。ファーサイドのミュラーが右足ダイレクトで合わせネットを揺らすと、スタジアムには幾ばくかの動揺が走った。

 わずかな沈黙ののち、スタンドはすぐに我に返り『ブラジル! ブラジル!』とピッチを鼓舞し始めた。だが、それもこの時のみ。この日決まった全8ゴールのうち、この1点目以外は、ブラジルが失点してもスタンドのテンションは変わらなかった。

 スタンドのブラジル人たちは一本調子な生暖かい応援を続け、後半に入るとドイツの得点に拍手さえ始めた。どこか最初から勝利を信じきれていないような、熱量の中途半端な声援。だからこそ、58000人を越える観衆の5パーセント前後であろうドイツサポーターたちの声援が歓喜に変わっていく様は鮮やかに際立った。

レーブ「我々は謙虚に次に進まねばならない」

 開催国が、それもただの開催国ではないブラジルが1-7で敗れるという歴史的な一戦となった。ドイツの大衆紙『ビルト』紙のウェブ版では、リオデジャネイロの有名なコルコバードの丘にあるキリスト像をメルケル首相にすげ替えた、冗談のような写真を早速掲載した。

 とはいえ、'06年に自国大会の準決勝で敗れた経験のあるレーブ監督(当時アシスタントコーチ)は相手を敬った。

「我々はブラジルが、選手が、スコラーリ氏が、ファン達がどう感じるか、同じ体験をした身として知っている。だからこそ我々は控えめに謙虚に次に進まねばならない」

 試合前からドイツ優勢の声は小さくなかった。ネイマールを失っただけでなく、主将にして守備の要、チームの最重要人物であるチアゴ・シウバを出場停止で欠いたブラジル。そもそも今回のブラジル代表は、ネイマール1人に攻撃のほとんどを依存するというチーム状態。勝ち続ける事でプライドがかろうじて保たれていた。

【次ページ】 万全のドイツが、あっという間に勝負を決めた。

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