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7つの言葉で振り返る2013年事件簿。
これがF1界の「流行語大賞」だ。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byAP/AFLO

posted2014/01/04 08:01

7つの言葉で振り返る2013年事件簿。これがF1界の「流行語大賞」だ。<Number Web> photograph by AP/AFLO

前輪を軸に、その場でくるくると車体を回すドーナツターンを披露するベッテル。路面との摩擦で出る煙は、今季の風物詩となった。

 もし、F1の世界に「流行語大賞」なるものがあったら、2013年は以下の言葉がノミネートされていたに違いない。印象に残った言葉とともに、2013年を振り返ってみたい。

マレーシアGPで発令されたチームオーダーの是非。

(1)「マルチ21」

 第2戦マレーシアGPでレッドブルが2人のドライバーに無線を通じて送った言葉(暗号)である。レース終盤の1-2体制をキープさせるための作戦だったが、2番手に甘んじていたセバスチャン・ベッテルが、チームメートのマーク・ウェバーをオーバーテイクしてトップを奪ってしまう。レース後、ウェバーはベッテルを口撃。記者会見でもベッテルは喜びよりも謝罪の気持ちを何度も口にしていた。しかし、それはウェバーへではなく、チームに対するものだった。

 それは、3週間後に開催された中国GPで、より明確になる。記者会見で再びマルチ21騒動について尋ねられたベッテルは、マレーシアでの会見時よりも自信に満ちあふれた表情で、ウェバーをオーバーテイクした理由を次のように語った。

「マーク(ウェバー)は、勝利を手にするに値しないと思ったから」

 じつは2012年の最終戦のブラジルGPでベッテルはウェバーから、ある仕打ちとも思える行為を受けていたからだった。それはスタート直後の幅寄せである。タイトルがかかった一戦でチームメートの幅寄せを受けたベッテルは大きく出遅れ、4コーナーでブルーノ・セナに追突され、最後尾まで脱落する。幸いベッテルは6位まで巻き返し、タイトル争いをしていたフェルナンド・アロンソが2位に終わったため、3点差でタイトルを獲得することができたが、背信ともとれるチームメートの行為をベッテルは忘れることができなかったのである。

 マレーシアGPではメルセデスAMGもチームオーダーを発令して、遺恨を残した。チームオーダーはモータースポーツが誕生したときから多用されてきた古典的かつ即効性のある戦略である。しかし、どの時代においても、チームオーダーは強い副作用を起こして、たびたび騒動を引き起こし、一時レギュレーションで禁止されていたほどである。したがって、使用する場合は安易に使用せず、自チームのドライバー同士の関係を把握し、十分に注意した上で発令することが望ましいということを思い知らされた。

【次ページ】 ピレリタイヤを巡り起こった事件とトラブル。

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