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4時間59分の死闘に見る、
「怪物」錦織圭の可能性。
~全米OP3回戦途中棄権の裏側~ 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2010/09/20 08:00

4時間59分の死闘に見る、「怪物」錦織圭の可能性。~全米OP3回戦途中棄権の裏側~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

'08年に続く全米オープン16強は逃したものの、予選勝ちあがり組では唯一3回戦に進出した

 まだジュニアでプレーしていた頃、全仏ジュニアで地元フランスのホープを叩きのめした錦織圭は、現地の新聞に「怪物」と書かれた。シャイでいつも笑顔を絶やさない彼に怪物の異名は似合わないなと感じたのだが、今回の全米オープンで、やはりこの男は怪物なのか、と思い直した。

 シングルス2回戦、錦織は4時間59分の死闘の末に、世界ランキング13位のマリン・チリッチ(クロアチア)を倒した。大会の公式ウェブサイトは“生き残りを懸けた戦い”という意味なのか、「ラストマン・スタンディング」と見出しをつけて、この試合を大きく報じた。

 この日の最高気温は34度。湿度も高く、両選手とも試合なかばから体に変調があった。チリッチは足にケイレンを起こし、錦織は左足のつけ根を痛め、ともにメディカルタイムアウトをとった。試合は消耗戦になった。二人は体力の限界とも戦っていた。そうして迎えたファイナルセット。チリッチの足が止まった。錦織だけが牛若丸のようにコートを駆け回り、チリッチは遠くのボールを追うことができなくなっていた。

 錦織の体力勝ちだった。ただ、その代償は大きく、左足つけ根の負傷と内転筋痛のため次の3回戦を途中棄権。錦織もまた、ぎりぎりの戦いだったのだ。

“ファンタジスタ”がメンタルとフィジカルの勝負を制す。

 第4セットの途中、錦織の心中に「もし、このセットを奪っても、もう1セットやらなくてはいけない。体はついてくるか」と不安が芽生えたという。それでもプレーの質は下がらなかった。むしろ第3セットが底で、第4、第5セットは尻上がりのプレーだった。崩れそうになる肉体を最後まで支えたのは、彼のメンタルタフネスだろう。

「チリッチに勝ったことよりも、5セット戦い終えた充実感がある」と錦織は満足そうに試合を振り返った。

 いつもはイマジネーション豊かなプレーが賞賛される錦織だが、この試合ではフィジカル、そしてメンタルの強さを称えるべきだろう。

“ファンタジスタ”の錦織が、じりじりするようなメンタル勝負を制してしまう。身長で20センチも上回る198センチの巨漢をフィジカルで圧倒してしまう。当時16歳の錦織を「怪物」と書いたフランス人記者の直感は正しかった。

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