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もう怖いものなし。
クルム伊達の不惑力。
~負けられない“二人の敵”~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2010/10/18 06:00

東レ2回戦で29位のハンチュコバを下し、40歳の誕生日に華を添えた

東レ2回戦で29位のハンチュコバを下し、40歳の誕生日に華を添えた

 シーズンは終盤戦を迎えているが、クルム伊達公子は世界ランキング56位と、昨シーズン末の100位から大きく順位を上げている。

 この秋が一つの正念場だった。昨年9月に韓国オープンで優勝しているため、1年経ってそのポイントが消滅する時点でランキングが急落する可能性があったのだ。しかし、今年の伊達はシーズンを通して安定した成績を残し、8月には復帰後初めてトップ50に入った。韓国オープンでは準々決勝で敗れたが、東レ・パンパシフィックの3回戦進出でランキングを挽回。来年1月の全豪は本戦からの出場が有望だ。

 今季の戦いは楽なものではなかったはずだ。昨年苦しんだケイレンは克服したものの、小さなケガが絶えなかった。試合が続くと疲労が蓄積し、故障につながることが多かったようだ。それでもランキングを上げていくというのは、彼女のここ一番での強さの証明だろう。

 予選からの出場を強いられた大会では、4大会のうち3大会で予選を突破した。全仏で世界ランク9位のディナラ・サフィナ(ロシア)を、東レでは15位のマリア・シャラポワ(ロシア)を下すなど、今季はトップ20プレーヤーに5勝7敗と、大物キラーぶりも見せた。

貪欲さに加え、ふところの深さを身につけた40歳の伊達。

 9月に40歳の誕生日を迎えた彼女にとって、最大の課題は回復力だという。東レの記者会見では「大会が進むにつれて敵が二人になる」と話した。一人は対戦相手、もう一人は自分の肉体という意味だ。この大会では3回戦で敗退し、「今日はさすがに40歳なりの体だった」と苦笑した。勝ち進むにつれて溜まる疲労が、伊達にとって重い足かせとなっていることは否定できない。

 試合が連日に及ぶと、その日の体調は朝起きてみなければ分からないという。しかし、「(現役を)続ける限りは向かい合っていかなくてはいけない」と、できる限りの準備をして試合に臨む。「状況はタフだが、こういう状況が続けば自分のテニスのレベルも上がる」と現状を受け入れているのだ。

 20代の伊達は、完璧主義で、いつも神経を張りつめているように見えた。ところが今の伊達には、すべてを受け入れるふところの深さがある。まさしく不惑、と言うべきだろう。しかも勝負への貪欲さは失っていない。こんなメンタリティーでテニスに取り組めるなら、強いのも道理。もう一人の敵である肉体に背かれない限り、いつまでもこの強さを保てそうにも見える。

<次ページへ続く>

【次ページ】 パワーテニスが主流の中、異彩を放つ伊達の技術。

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