カナリア軍団の「3+8」サッカーは完璧なはずだった。
だが、準々決勝で思わぬ敗退。脆さを露呈したスタイルの深層を探る。
ブラジルにとって早すぎる敗退だった。
死のグループと言われたグループGを2勝1分けで突破し、決勝トーナメント1回戦ではスペインを苦しめたチリを3-0で粉砕。
世界中がブラジルこそが優勝候補筆頭だと考えていた。
そして4戦無敗で迎えたオランダ戦。センターサークル付近からの1本のパスをロビーニョがダイレクトで押し込み先制点を挙げた。
このシーンは今大会のブラジルの手数をかけない、シンプルな攻撃を象徴するものだった。スペインのように中盤でボールを回し続けることもなく、アルゼンチンのように攻撃に人数を割いて畳みかけることもない。
ボールを奪取してから時間をかけずに、前線のタレントの個人技で、最も近い道筋からゴールを目指す。
3人のタレントと8人の労働者が創り出すサッカー。
この4年間、ドゥンガ監督はチームを作る上でこのスタイルを徹底してきた。中盤の守備の軸で、指揮官の信頼を得たボランチのジウベルト・シウバは言う。
「今の代表チームは上手く守ることさえできれば、前線のタレントが何かやってくれる。勝つためにはブラジルはこのスタイルを続けなければならない」
ベスト16のチリ戦ではブラジルのそんなスタイルがはっきりと表れていた。
ルイス・ファビアーノが決めた2点目。ボール奪取後、左サイドのロビーニョがドリブルで縦へ進むと、中央のカカへ。カカはダイレクトでペナルティエリア内に走りこむルイス・ファビアーノへスルーパスを送り、ストライカーはGKをひらりとかわして決めた。
ロビーニョ、カカ、ルイス・ファビアーノの3人の個人技でシンプルに相手を崩し、得点につなげる。まさにドゥンガの狙っている形だった。
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