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“ケンカ番長”井手口陽介の成長記。
遠藤のパス、今野の動きを盗んで。

posted2017/09/13 11:30

 
“ケンカ番長”井手口陽介の成長記。遠藤のパス、今野の動きを盗んで。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

鮮やかなミドルシュートに大胆不敵な表情。井手口陽介はここ近年の日本代表にいなかったタイプである。

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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Takuya Sugiyama

「あいつ、すげぇな」

 オーストラリア戦の帰り、ファンやサポーターが井手口陽介のことをそう口々に語っていた。鋭い出足で相手のボールを噛みつくように奪い、攻撃では勝利を決定づける得意のミドルシュートを披露した。まさにヒーロー的な活躍で、日本をロシアW杯へと導いたわけだが、彼はいきなりポンとその試合に出て、輝いたわけではない。

 初めて井手口を見た3年前から、彼はただ者ではない雰囲気をプンプンと発していた。

 井手口から初めて“違い”を感じたのは、AFC U-19選手権ミャンマー2014に出場した時だった。エース南野拓実を擁するU-19日本代表に井手口は18歳で招集され、川辺駿や坂井大将とボランチのポジションを争っていた。初戦の中国戦は後半から出場すると、続くベトナム戦ではスタメン出場を果たした。

 その試合、井手口は高温多湿の中でほとんど止まることなく走り回り、ロスタイムにゴールを決めた。決勝トーナメント進出をかけた韓国戦でもスタメン出場して活躍。短期間でチームにとって欠かせない選手になったのである。

プレーは荒いが「あいつがあんなに走る選手とは」

 当時はプロ1年目ということもあってかプレーに荒さはあったが、その頃から今に通じる凄みを見せていた。センターバックでプレーしていた中谷進之介(現柏)は「あいつがあんなに走る選手とは知らなかった。暑さの中、すごい運動量だった」と、この頃から周囲の選手を驚かせるリミットレスの体力を誇っていたのだ。

 また、味方に出すパスも丁寧だった。

“どこかで見たことあるようなパスだな”と思って、井手口に聞いてみたことがある。すると、こんな答えが返ってきた。

「ヤットさん(遠藤保仁)と今さん(今野泰幸)がいるのはすごく大きいですね。練習中から細かく、1本1本のパスを相手が受けやすいように考えて出しているんで、それを間近で見て、自分も意識しています。運動量は、みんなが疲れている時に自分が走ったら負担を減らせると思っているし、セカンドボールを拾ったり、球際を厳しくいくのと同じように、そこは誰にも負けたくない気持ちでやっています」

 井手口の持ち味の素地は、この頃からすでに築かれており、彼自身もそれを意識していたのだ。

【次ページ】 プロの壁を超えるきっかけになった天皇杯決勝。

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