プロ野球亭日乗BACK NUMBER
嶋、大野、小林という軸なき捕手陣。
ならばWBCは「3本の矢」しかない。
posted2017/02/23 11:35
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki/Hideki Sugiyama(2)
準決勝敗退した第3回大会。敗れた相手は下馬評は決して高くなかったプエルトリコだった。
プエルトリコといえば過去にはロベルト・クレメンテ、バーニー・ウイリアムズ、ロベルト・アロマーら多くのメジャーリーガーを輩出した中南米の雄の1つだ。
今大会にもカルロス・コレア(アストロズ)やフランシスコ・リンドア(インディアンス)、カルロス・ベルトラン(アストロズ)らメジャーでもトッププレーヤーの野手が顔を連ねているが、その反面、投手陣にはそれほど大物選手が輩出されていないお国柄である。
一方、前回大会も3Aクラスで構成された投手陣は、それほど強力ではなかった。
実際に準決勝の日本戦で先発したマリオ・サンチアゴも前年は韓国プロ野球のSKでプレーし、マイナー通算成績も36勝51敗にすぎない“格落ち”の投手だった。
だが、日本打線はこのサンチアゴを5回途中まで打ちあぐみ、その後も小刻みな継投にかわされて、結局8回に挙げた1点に抑え込まれてしまった。
プエルトリコの捕手モリーナに完璧に抑えられた侍打線。
日本投手陣は3点に抑えたのだから、結果的には打てなかったことが敗因になった。
そしてこの弱小投手陣を見事なまでに臨機応変にリードして、侍打線を翻弄したのが、ベテラン捕手のヤディアー・モリーナだった。
このときの狡猾さについては大会直後の芝山幹郎さんのコラムに詳しいが、日本はモリーナ1人にやられたようなものである。
国際大会ではそれぐらいに捕手の力がモノを言う。
「日本の選手とはちょっと考え方が違うケースもある。何を狙っているのか、どういう意図で打席に立っているのかということを、仕草とか雰囲気で感じ取らなければならない」
第3回大会で日本の主戦捕手を務めた巨人・阿部慎之助がこんな話をしていた。
そういう観察眼に長けていたのがモリーナであり、過去の日本のホームを守ってきた捕手たちだったのだろう。