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ブンデス最年少主将は、酒井高徳。
名門HSVが全幅の信頼を置く理由。
posted2016/12/22 07:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
あの試合は、1人の選手の思慮深さと大胆さが垣間見られる一戦だった。
12月10日、アウクスブルクをホームにむかえたハンブルガーSV(HSV)は序盤から、アグレッシブな戦いを見せていた。前節につかんだシーズン初勝利の手応えと、地元サポーターの後押しを受けて。
しかし、0-0の状況で迎えていた前半44分、HSVはトップ下のホルトビーが相手MFコールへの肘打ちで退場を命じられてしまう。混沌とした中で迎えたハーフタイムにギスドル監督は選手に訴えかけた。
「相手のセンターバックもイエローカードを1枚もらっているし、他にもカードをもらっている選手はいる。今日の試合で相手に退場者が1人も出なかったら、おまえらのアグレッシブさが足りないということだ。承知しないぞ!」
俺らにとってチャレンジすべきシチュエーションだ!
ハーフタイムを終え、HSVの選手たちがピッチに出てくる。それぞれがポジションへ移ろうとしたとき、左腕にキャプテンマークを巻いた酒井高徳が仲間たちを呼び止めた。
肩を組み、円陣を組んだ。もちろん、試合前にはいつも円陣を組むのだが、後半開始時に円陣を組むのは珍しい。
「オレたちは10人になったけど、良いサッカーは出来ているぞ。ディフェンダーが退場したわけじゃないんだから、攻撃の駒が1つ減るだけなんだから、しっかりと守りながらやれば今まで通りチャンスは来る。このシチュエーションは俺らにとってチャレンジすべきシチュエーションなんだ。チームのために戦って、この試合に勝とうぜ!」