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ブンデス最年少主将は、酒井高徳。
名門HSVが全幅の信頼を置く理由。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2016/12/22 07:00

ブンデス最年少主将は、酒井高徳。名門HSVが全幅の信頼を置く理由。<Number Web> photograph by AFLO

鬼気迫る表情でチームメートを鼓舞する酒井高徳。クラブ史で一度も降格を味わったことのない名門を立て直そうと必死に戦う。

同じ方向を目指すために、意思疎通を図った。

 チームメイトたちに語りかけた理由を、酒井はこう振り返っている。

「これは、決して悪い意味ではないんですけど、目指すところが少しバラバラになっている気がしたので。(人数が少ない状況だから)落ちついてプレーすべきだという選手もいたし、(ホームだから)アグレッシブに行こうという選手もいました」

 それぞれが「チームのために上手く戦おうとしていた」姿勢は素晴らしいことだと念を押した上で、酒井はこう続けた。

「その点で、みんなの意思疎通を図ることを意識しました。同じ方向をむくために。もちろん、いつも勝ちたいと思ってやっていますが、こういう苦しい試合をものにしたかった。(ウインターブレイクによる中断期間まで)残り3試合しかないし、次の試合のことを考えているヒマなんてないぞ、と思ったんです」

酒井の的確な状況判断で、相手DFに退場処分が。

 攻撃的な姿勢は失わず、それでいて、注意深く戦いを続けていたHSVに転機が訪れたのは、66分のことだった。

 センターラインの手前でボールを受けた酒井は、すぐに展開せず、ドリブルでカウンターへと出て行こうとした。たまらず、コールが酒井をファールで止めた。そのコールに出されたのはイエローカードだ。しかし、彼は9分前にも警告を受けていた。主審が続いて掲げたのは、レッドカードだった。

 すると、直後の68分にHSVの左MFコスティッチが待望の先制ゴールを決めた。コスティッチのゴールを見届けた酒井は、何度も飛び上がっては、ゴール裏のサポーターの前で、拳を突き上げた。そして、コスティッチと抱擁をかわした。

【次ページ】 喜びをあらわにする酒井を見たのはいつ以来か。

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