スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ジダンも逆らえないペレス会長の力。
「ベイルを使え」はレアル鉄の掟。
posted2017/04/27 11:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
「10人で2-2に追いついたあとはもう少し頭を使ってプレーし、まとまって守らなければならなかった。満足はできない」
「試合を決めるチャンスはあった。それが残念だ」
土壇場の決勝弾に沈んだエル・クラシコの直後、フラッシュインタビューに現れたジネディーヌ・ジダンはいつもと変わらぬ穏やかな表情を保ちながらも、その言葉には悔しさをにじませていた。
メッシの独壇場となった今回のクラシコだが、改めて振り返ってみると両チームともにミスの多い大味な試合だった印象がある。
特にレアル・マドリーは引き分けでも十分な立場にありながら、セルヒオ・ラモスの退場やラストプレーでの失点まで、あまりに多くの隙をライバルに与えすぎた。
しかもこの敗戦は、これまで順風満帆のシーズンを送ってきたレアル・マドリーに少なくない波紋をもたらすことになった。
なぜ故障明けのベイルを先発させたのか……。
原因の1つは、左足ふくらはぎの負傷により39分にピッチを退いたギャレス・ベイルの先発起用だ。
たとえドクターが再発のリスクはないと判断したとしても、ケガ明けでベストコンディションにない彼をスタートから使う必要があったとは思えない。ベンチに置いておき、後半の勝負どころで投入した方がバルサとしても嫌だったはずだ。
しかもネイマールが不在の左サイドにアルカセルを起用しなければならなかったバルサとは違い、レアル・マドリーはベイルの代役探しに困っていたわけではない。
攻守のバランスを重視するならハードワーカーのルーカス・バスケス(彼はベンチにも入れなかった)、スピードと得点力を求めるならアセンシオやモラタ、ポゼッションを高めたいなら絶好調のイスコやハメス。戦略に応じてスターターが務まる選手は他にいくらでもいたのだ。