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SB、楽天、DeNAが指名の勝ち組?
12球団の2015年ドラフトを完全採点!
posted2015/10/23 16:10
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
NIKKAN SPORTS
昨年の指名は81人+育成23人の104人、それに対して今年は88人+育成28人の116人。その年が“豊作”だったかどうかは10年経たないとわからないが、今ドラフト前の“豊作情報”がうなずける数の多さだった。一番人気の高橋純平(県岐阜商・投手)にはソフトバンク、日本ハム、中日が1位入札し、抽選でソフトバンクが交渉権を得た。
個々の球団の採点をする前にまず、今年も逸材がパ・リーグに入団したことについて考えたい。過去10年のスター選手への入札状況は次の通りである。
2006年・田中将大……横浜、オリックス、日本ハム、◎楽天
2007年・中田翔………阪神、オリックス、ソフトバンク、◎日本ハム
2009年・菊池雄星……阪神、ヤクルト、中日、楽天、日本ハム、◎西武
2012年・藤浪晋太郎…オリックス、ロッテ、ヤクルト、◎阪神
2013年・松井裕樹……DeNA、中日、ソフトバンク、日本ハム、◎楽天
2014年・有原航平……DeNA、広島、阪神、◎日本ハム
以上6人のうち田中、中田、松井はパ・リーグの入札のほうが多い(菊池、藤浪は半々)。スター選手にリーグ全体で向かっていくのがパ・リーグの特徴で、セ・リーグには希薄。こういうパ・リーグの連帯感の強さは、人気が極端に低い時代が長かったことも一因なのだろう。ということで、今年の採点に移ることにしよう。
将来を見たソフトバンクと楽天、課題取り組んだDeNA。
【ソフトバンク90点、楽天、DeNA85点】
高橋の抽選に勝ったソフトバンクはよかった。昨年の1~4位が高校生の指名で、今年は1~6位の全員が高校生だった。こういう指名を10年連続BクラスのDeNAがやったら非難の声が沸き上がるはずだが、現有戦力の能力が抜きんでて高いソフトバンクなら3~5年先の将来を考えた指名と高評価できる。
スカウトに聞くと、「3年先は武田翔太、千賀滉大、松本裕樹('14年1位)で3本柱」という声が返ってくる。故障を持ち越して入団した松本が三軍で順調に調整していることがうかがえる発言である。ここに高橋が加わり、2位の最速152キロ右腕・小澤怜史(日大三島・投手)も加わる。こういう指名を見せられると批判する気が起こらない。
楽天は、一本釣りを狙った平沢大河(仙台育英・遊撃手)の交渉権は抽選で負けたが、外れ1位のオコエ瑠偉(関東一・外野手)以下、吉持亮汰(大阪商業大・遊撃手)、茂木栄五郎(早稲田大・三塁手)、堀内謙伍(静岡・捕手)と野手を1~4位に並べた。その指名にも「思想」を感じる。'04年に初めてドラフトに参加し、最上位の評価で獲得したのはすべて投手。それが今年は抽選で外した平沢も、オコエ以下の4人も野手。
チーム成績は打率、本塁打、得点とすべて最下位。野手の補強がなによりも優先されるべきなのは誰の目にも明らかだ。その課題に真正面から取り組んだ指名は非常に好感が持てる。
「10年連続Bクラス」と紹介したDeNAの課題は、防御率3.80(リーグ6位)でわかるように投手陣の整備(チーム打率.249は3位)。その穴を埋められそうな即戦力投手2人を上位で指名した。
1位今永昇太(駒澤大)、2位熊原健人(仙台大)は大学球界を代表する左右の本格派で、熊原はまさか2位に残っているとは思わなかった。今永は左肩の故障で春のリーグ戦を全休し、秋も数えるほどしか登板していないが、ストレートに速さが戻り、変化球のキレも3年時と変わらない。7、8割回復していると思っていいだろう。この2人がローテーションに入ったらDeNAは劇的な変化を遂げるかもしれない。