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黒田・前田が広島を去るとしたら……。
大瀬良大地に、泣いている暇はない。

posted2015/10/20 10:40

 
黒田・前田が広島を去るとしたら……。大瀬良大地に、泣いている暇はない。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

緒方孝市監督は「大地に責任はない」とコメント。前田のメジャー行きが噂される中、大瀬良にはエースとしての期待もかかる。

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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Nanae Suzuki

 よみがえる光景に胸がしめつけられる。球場を360度一周できるマツダスタジアムのコンコースを走ると、誰もいないグラウンドが目に入る。自然と地面を蹴る力が強くなり、速度があがった。

「マツダスタジアムでやることで、あの悔しさを忘れないようにしたい」

 今季最終戦から約1週間、広島ナインには休みが与えられた。大瀬良大地は毎日のようにマツダスタジアムに姿を見せ、そして走った。まるであの日の光景を胸に刻むように──。

 2015年10月7日、マツダスタジアムでの中日戦。勝てば3年連続クライマックス・シリーズ進出が決まる一戦だった。しかし、広島の空気は重い。先発の前田が走者を背負いながら要所を締める投球でスコアボードに0を並べるも、広島打線も0行進。さらにイニングが進むにつれて、重荷を背負わされているかのようにバットが振れていない。

 8回が始まる前にブルペンのインターホンが鳴った。同時期に先発ジョンソンも肩を作っていたが、呼ばれたのは大瀬良だった。負けられない最後の試合で、広島首脳陣は2015年の勝利の方程式を担った右腕に託した。今季途中から何度も繰り返してきた作業を行い、背番号14はマウンドへ向かった。

“勝利の方程式”はわずか8球で瓦解し――。

 しかし、中継ぎで42試合目(計51試合目)の登板は、わずか8球で終えた。打者4人に1アウトしか取れず、3失点。試合はほぼ決した。

 体はすでに限界だった。初球カットボールに、大瀬良の顔がゆがむ。平田の打球が二遊間を抜けていったからではない。シーズン途中から中指の関節に痛みがあった。関節炎の影響でリリース時、最後に押し込めない。特にわずかにひねるカットボールでは激痛が走る。決勝点となるエルナンデスの適時打もカットボールだった。

 先発で10勝を挙げて新人王を獲得した昨年から2年目の今季。開幕から状態は良かった。ただ、勝ち星に恵まれなかった。そんな矢先に、中継ぎへの配置転換を言い渡された。降格ではない。開幕から不安定な中継ぎ陣を強化し、接戦をものにするために首脳陣が決断した最善の策。それが大瀬良のセットアッパー起用だった。

【次ページ】「『僕でいいのかな』という思いは常にあった」

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