マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト1位候補の直球と“精緻さ”。
受けて分かった上原健太の「強み」。
posted2015/10/20 11:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
今年のドラフトの有力1位指名候補・上原健太投手(明治大)が、“いい感じ”で最後の秋を投げ進めている。
上原健太のボールを受けたのは今月(10月)のはじめ。つい2週間ほど前のことだ。
リーグ戦の真っ最中。しかも、4年生の秋。ドラフトという“岐路”も控えている。
お願いするのも正直気がひけるが、いざ「やる!」となると、これはなんとも気を遣う。いや、十分に気を遣わなければならないと考えている。
おそろしいほどのボールを投げる剛腕といえども、相手はなま身の人間である。投げてもらった後の様子はとても気にかかる。
9月下旬、やはりシーズンたけなわの頃にお願いした仙台大の剛腕・熊原健人投手は、その後も140キロ後半の重い速球で好調を続けていたと聞いていたが、残念ながら東北福祉大との決戦に破れ、リーグ優勝を逃した。
そういう報せを受けるたびに、その理由のいくばくかの部分はあの“激投”だったのではなかったか……そんなうしろめたさを感じてしまうこともたびたびである。
それだけに、好調を続けながら天王山の早稲田大戦を迎えた明治大・上原健太の奮投にはホッとしていると同時に、相手チーム野球部OBという立場を超えて、心ひそかに応援のエールを送ったりしている今日この頃である。
フォームは威圧的、でも柔らかい物腰。
自然とそんな心持ちにさせてくれる青年だ。彼に負けるのならしかたない……。
上原健太のボールを受け、2人でじっくり話してみて、うっかりそう思ってしまった。
190cmの長身から長いリーチを目いっぱい大きく振りかぶり、こっちに向かって巨体をおおいかぶせてくるようなフォームは十分威圧的で怖い、こわい。
なのに、見た目からは想像しにくいとてもふんわりとした物腰で、とてもオトナな思考の話を次々に繰り出されては、こういう青年を痛めつけてはいけないのでは……そんなホトケゴコロすら湧いてきてしまう。