錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
沸騰するテニス人気が錦織圭に集中。
異常な注目度を軽減してあげたいが……。
posted2015/10/19 10:40
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
錦織圭にとって上海マスターズは鬼門かもしれない。
単純な推測ではあるが、前の週の東京で使う労力があまりにも大きいということではないだろうか。上海では2011年にベスト4入りした以外はベスト16が最高。2011年というのは東京で1回戦負けした年だった。東京で優勝した2012年、2014年はいずれも上海の2回戦で敗れていることを考えれば、ますますこの「東京から上海」という、距離的にはそうハードではないはずの移動をはさんだ2週間、好調を維持することの難しさがうかがえる。
異常なまでの注目度にどこまで耐えられるのか?
今回は準決勝止まりだった錦織だが、楽天オープンにかける意気込みとストレスを考えれば、費やす労力は依然として他の同じレベルの大会に比べて大きい。
錦織見たさに連日、有明テニスの森にファンが押し寄せている状況に、「カートで移動しているとき、動物園のライオンってこんな感じなのかなと思いました」と冗談を言った。「こんなこと言っていいかどうかわかんないですけど」と前置きしたが、何も錦織はファンを珍獣に見立てて「サファリの中を回っているみたいでした」と言ったのではないのだから問題ないだろう。世界4位までいった世界的スターでも、やはり日本にいるときの「見られている」感は半端ではないようだ。
それでも多少の居心地の悪さも笑いに変え、メディアにネタを提供してくれる。日本の記者会見は縛りが強くどうもムードが固いが、そんな中でも錦織はいつも適度にリラックスしているようだ。
爆笑に包まれる、錦織の記者会見。
何回戦のあとだったか、「ミスが増えたのはなぜか」というような質問があった。錦織は一瞬答えを探すような声を発したが、すぐにやめて、こう言った。
「まあ、そんなことを言われましてもねえ……そういうこともあります」
ニック・キリオスのように「じゃあ、アンタはできるのかよ」とまではいかなくても、言い方一つで険悪にもなりかねないやり取りだ。しかし、このときは会見場全体が爆笑。私たちは何につけても錦織のセンスに救われている。