サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ピッチの「内外」で信頼される男。
“宴会部長”槙野智章の偉業の数々。
posted2015/07/31 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
誰が呼んだか、宴会部長。
槙野智章はピッチ内にとどまらず、ピッチ外でもヴァイッド・ハリルホジッチ監督から信頼を得ているようだ。なにせ、選手のバースデーイベントになると「君に時間を与えよう」とわざわざ“MC”に指名されるというぐらいだから。
日本代表には合宿の最中、誕生日の選手がいれば全員で祝福するというならわしがある。ケーキが用意されたり誰かが一発芸をやったりと、合宿中の日本代表にとって、貴重な息抜きの時間となっている。
誕生日の本田に向かって「俺たちは何ジャパンだ?」。
あれはロシアW杯アジア地区2次予選シンガポール戦に向けた合宿中の6月13日夕食後。29歳の誕生日を迎えた本田圭佑を祝う会が催された。“槙野部長”は、ここで圧巻のパフォーマンスを披露する。ミックスゾーンでの本人のコメントを含め、情報を集めるとこんな感じだろうか。
宿泊ホテルの食事会場はざわついていた。
ババッ。
スティーブ・ジョブズばりにスポットライトを浴びて選手、スタッフの前に登場した槙野はマイクを手に「俺たちはここに何をしに来たのか?」などと静かに問い掛けていく。
そして誕生日の本田に向かって「俺たちは何ジャパンだ?」。
「ハリルジャパンだ」
そう答えた本田の言葉にかぶせるように「そうだ、ハリルジャパンだ!!! みんなでハリルジャパンだと叫ぼうじゃないか!」
ちょっと間を置いて、選手、スタッフから「ハリルジャパン!」の野太い大合唱。槙野部長の呼びかけに、笑みを浮かべるハリルまでもが声をあげる――。
盛り上げるためには“監督いじり”も厭わない。
2010年10月、代表監督に就任したアルベルト・ザッケローニが初陣のアルゼンチン戦を迎える前も、あるスタッフの誕生日会で槙野が全員の視線を集めていたという。