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新鋭が全仏で得た収穫は?19歳・西岡良仁の可能性。
~世界4位に肉薄したテクニック~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2015/06/06 10:30

敗れたものの、2セット目にはタイブレークまであと一歩というところにまで迫った西岡。

敗れたものの、2セット目にはタイブレークまであと一歩というところにまで迫った西岡。

 世界4位のトマーシュ・ベルディヒに、全仏初出場の西岡良仁が食い下がった。持ち味の出た場面も多く、ストレート負けとはいえ内容は決して薄味ではなかった。

「第2セットから、ちょっとずつ手応えのある試合になった。相手に無理をさせ、ミスを誘うところまではいけた」

 西岡は落ち着いて試合を振り返った。

 全仏の男子シングルスに日本から5人が出場したのは1967年以来48年ぶり。その最年少が19歳の西岡だ。本戦勝利はならなかったが、予選から計4試合、171cmの小兵は業師の本領を発揮した。

 予選3試合は圧巻だった。2回戦では相手のマッチポイントを2本逃れ、ファイナルセット8-6の勝利。窮地でドロップショットを仕掛ける勝負度胸と冷静さは10年選手のようだった。同3回戦では要所を押さえ、6-2、6-1の快勝。「大事なゲームを全部自分が取ったことで差が開いた」と胸を張った。

緩急、攻守の切り替えの大胆さを生む気概と知力。

 クレーの全仏では彼の巧妙さが一層輝く。独特のリズムの持ち主だ。球速や回転、コースにたっぷり変化をつけてショットを操る。なかでも彼らしいのは、何でもない“つなぎ球”でミスを誘うところだろう。死んだふりという言葉があるが、勢いのない“死んだボール”を絶妙のタイミングで送り込み、相手のリズムを崩す。攻守の切り替えも大胆で、守備的な局面から、まさかというような高速カウンターが飛んでくる。

 個性的なプレーは、中学3年の夏から拠点とする米国・IMGアカデミーで、世界中から集まった猛者たちと練習する中、磨いたものだ。

 ベルディヒのようなトップ選手を仕留めるには、もう一段上の正確さとしつこさ、嫌らしさが求められるだろう。トップ10選手と初めて対戦し、「あのレベルを体感できたことが収穫」と西岡。現状での隔たりは決して小さくはないが、彼にはそれを埋める気概、そして、具体的な道筋を描く知力もありそうだ。

 西岡が憧れるのは、'98年に世界ランク1位になったマルセロ・リオスだという。ジュニア時代、「参考になる」とコーチに勧められ、ユーチューブで映像を検索、たちまち憧れの選手になった。タイプは違うが、リオスも左利きの個性派。これにならって、技巧派の道を究めてほしい。

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