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J2降格も監督続投で、開幕12連勝!
“湘南スタイル”に潜む2つの秘密。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byShonan Bellmare

posted2014/05/08 10:50

J2降格も監督続投で、開幕12連勝!“湘南スタイル”に潜む2つの秘密。<Number Web> photograph by Shonan Bellmare

開幕12連勝はJ2の新記録を更新中。サプライズ降格といわれたジュビロ磐田を大きく突き放し、1年でのJ1復帰へ向けて最短距離で走り続けている。

 強い。とにかく強い。

 目が離せない。一瞬たりともピッチから視線を外せない。

 Jリーグ開幕から2カ月以上が経過したが、いまだ負けなしのチームがある。

 J2リーグの湘南ベルマーレだ。3月、4月を全勝で乗り切り、過密日程のゴールデンウィークも確実に白星を加えた。開幕から12連勝(!)の勝点36で、首位を独走している。

 リーグ戦の勝ち点の優勝ラインは、試合数の倍が目安と言われる。42節で争われるJ2なら「84」だ。実際に、昨シーズン優勝のガンバ大阪は勝点87、2位のヴィッセル神戸は勝点83で自動昇格を果たした。全日程の3分の1に満たない12試合で、すでに勝点40を目前としている今シーズンの湘南が、どれほどハイペースなのかが分かるだろう。

 他チームに並走を許さない強さの要因を、ふたつあげたい。

存続の危機に立った湘南の資金力は限りがある。

 ひとつ目はスタイルの追求である。

 J2からJ1へ昇格したクラブのほとんどは、〈守備力の強化〉か〈補強による攻撃力アップ〉でJ1定着を狙う。前者の好例は昨シーズンのヴァンフォーレ甲府で、後者を選択したのは今シーズンのヴィッセル神戸だ。

 12節時点で暫定6位と健闘する神戸を牽引するのは、得点ランキング1位のペドロ・ジュニオールと同2位のマルキーニョスだ。J1での実績豊富なブラジル人FWは、ともに新加入である。

 しかしかつて存続の危機に立ったこともある湘南は、親会社を持たない。資金力には限りがある。即戦力の外国人選手を補強したり、日本人の中堅やベテランを獲得したりするのは難しい。ユニホームの胸スポンサーを確約するような責任企業が現われないかぎり、10億円台前半で推移する年間予算が劇的に増えることはないだろう。

 それだけに、湘南は下部組織を選手の重要な供給源としている。トップチームの平均年齢は、おおむね25歳以下で推移する。カテゴリーを問わずに選手を育てて戦うのが、湘南が辿り着いたクラブの方向性なのだ。

【次ページ】 曹貴裁監督にスタイルを曲げさせなかった「記憶」。

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