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J2降格も監督続投で、開幕12連勝!
“湘南スタイル”に潜む2つの秘密。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byShonan Bellmare

posted2014/05/08 10:50

J2降格も監督続投で、開幕12連勝!“湘南スタイル”に潜む2つの秘密。<Number Web> photograph by Shonan Bellmare

開幕12連勝はJ2の新記録を更新中。サプライズ降格といわれたジュビロ磐田を大きく突き放し、1年でのJ1復帰へ向けて最短距離で走り続けている。

曹貴裁監督にスタイルを曲げさせなかった「記憶」。

 果たして、2度目のJ1復帰を果たした昨シーズンの湘南は、守備に軸足を移すことも、即戦力の得点源を補強することもしなかった。J2で培った独自のスタイルで、J1の列強に挑んだ。

 就任3年目の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督は言う。

「湘南というクラブの立ち位置、チームの平均年齢、J1で成功した選手がほとんどいない編成で、際どい試合に競り勝ったり、引き分けに持ち込んだりして残留を目指すのが、果たしていいのだろうか。僕のなかでは『?』だった」

 頭に浮かぶ疑問符の先には、ヨーロッパで見た風景があった。ケルン体育大学(ドイツ)への留学で指導者としてスタートを切り、シーズンオフにヨーロッパへ足を運ぶ指揮官は、勝敗を越えた価値を追求するべきだと考えていた。2005年から湘南に関わることで辿り着いた境地は、フロントが思い描く未来図にも重なっている。

「ヨーロッパでは小さな街のクラブにも、独自のスタイルがありますよね。それに対して日本は、目ざすサッカーをイメージできるクラブがまだ少ないと感じます。

 我々はスモールクラブですから、勝ち負けだけにとらわれないスタイルを宿していかなければいけない。そういうことも含めて、マイボールを積極的に受けたり、相手の嫌なところへ入っていったり、ドリブルで仕掛けたりすることを、J1でも選手たちに求めた。もちろんそれは、僕がやりたいからではなく、湘南にいる選手ならできるからです。

 誰が見てもこのチームはチャレンジしているという回数を増やすことが勝利への近道であり、選手たちの成長につながると思った。やっぱりというか、ラスト10試合はそういう試合が増えたんです」

降格しながらも、フロントは監督と再契約を結んだ。

 昨シーズン、開幕から17節までの前半戦は、8試合で無得点に終わった。それが18節以降は3試合まで減り、実に15試合が1点差以内のゲームだった。

 3-4-3のシステムに個々の攻撃性能を余すところなく落とし込んだサッカーは、負けてなお鮮烈な印象をピッチに刻んだ。J2では知られていた“湘南スタイル”というフレーズが、J1でも広く浸透していった。そしてフロントは継続と深化でのJ1返り咲きを目ざし、降格にもかかわらず曹監督と新たな契約を結んだのだった。

【次ページ】 J1からのオファーを断って残留した主力も。

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