欧州CL通信BACK NUMBER
ミラン不利を覆してバルサに完勝!
エルシャーラウィ、“エースの証明”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/02/21 14:20
メッシに挑むエルシャーラウィ。すべての得点機に絡んでFWとしての存在感をアピールしただけでなく、守備面でも大きくチームに貢献した。
呆然とするバルセロナのベンチから向けられる視線の先では、派手なトサカ頭のFWエルシャーラウィが、チームメイトと飛び跳ねている。
2月20日のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦第1戦、バルセロナをホーム「サンシーロ」で迎え撃ったミランは、MFボアテンクとMFムンタリのゴールによって2-0の完勝を収めた。ベスト8進出に大きく近づく先勝をもたらしたのは、躍動した2人のガーナ人選手によるゴールだった。しかし、そびえ立つ自慢のモヒカンも誇らしく“エースは自分だ”とこの試合で欧州中に証明したのは、2得点のどちらにもプレーで絡んだ20歳のイタリア代表FWであった。
成長したエルシャーラウィが、再びバルセロナへ挑む!
下馬評はいかにもミランに分が悪かった。
やはり準々決勝で対戦した昨季は、ホームでの第1戦を無失点ドローで切り抜けたものの、アウェイでの第2戦で1-3とあえなく敗れ去った。昨季のチームには、FWイブラヒモビッチもDFチアゴ・シウバ(ともに現パリSG)もいた。大会を4度制した“CLマイスター”のMFセードルフ(現ボタフォゴ)を初め、何度も修羅場をくぐりぬけたベテランたちも大勢いたし、欧州カップ戦に強いFWパト(現コリンチャンス)もまだいた。
彼らに混じって30分強しかプレーできず、力の差を見せられた敗戦から1年、エルシャーラウィは大きく成長して、バルセロナに挑んだのである。
“バロンドーラー”メッシが、まともなシュートを打たせてもらえない。
前半16分のCKで、ボアテンクの際どいシュートをお膳立てし、GKバルデスに冷や汗をかかせる。35分には逆にボアテンクからの縦パスを敵陣で合わせ損ねたが、一歩ずつ、一手ごとにバルサゴールへ迫った。
スペースを潰され、思うようにボールをもらえない“バロンドーラー”メッシは、シュートらしいシュートをろくに打てなかった。バルサの選手たちは一様に“何かおかしい……”とでも言いたげな表情で、後半を迎えた。
左サイドをドリブルで疾駆するエルシャーラウィを止めるには、ファウルするしかない。後半12分、罠に落ちたのはDFダニエウ・アウベスだった。獲得したFKの流れから、こぼれ球をMFボアテンクが左足で蹴りこんで、ミランが先制した。