MLB東奔西走BACK NUMBER
黒田博樹の成功と松坂大輔の蹉跌。
ダルビッシュが2人から学ぶべきもの。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/11/29 10:30
黒田博樹は今シーズン、32試合に登板し13勝16敗、防御率3.07とチームに貢献。FAとなっており、残留か移籍かその動向が注目される。松坂大輔は右ひじの手術から順調な回復を見せており、来季復帰に向けリハビリに励んでいる
ダルビッシュの実力が傑出しているのは確かだが……。
しかしながら、15年以上もメジャーで取材を続けており、日本で実際にダルビッシュの投球を見ていないし、直接本人から話を聞いているわけでもない。だから、知り合いの選手や球界OBから聞いた情報を基に、「ダルビッシュがNPB史上傑出した投手の1人であるのは間違いないし、過去に挑戦した日本メジャー投手の中でも1、2を争う投手だ」としか答えようがなかったのが実情だ。
だが、長年の取材経験の中で個人的に実感していることは球威、球種、投球術を含め日本人投手の多くがある程度メジャーでも戦えるということだ。もちろん過去の選手たちを見てきても、すべての投手が成績を残しているわけではない。そこに生まれる相違点は、各選手の“適応力”にかかわっているのだと思っている。
シーズンを通し投げた黒田と怪我で離脱した松坂。
実はそんな思いを強くした出来事が、今シーズンの黒田博樹投手と松坂大輔投手の明暗だった。
松坂が2007年、黒田が2008年。それぞれに大きな期待を受けながらメジャー移籍を果たした両者だが、今シーズンの評価は雲泥の差が出てしまった。
黒田は不振のドジャースで投げ13勝16敗と負け越したとはいえ、メジャー4年目で、ほとんどの成績が自己記録を更新するなど、このオフ各チームから注目されるFA選手になっている。
一方、松坂はご存知のように、シーズン途中で右ひじの靱帯断裂が判明し、腱移植手術を受け、現在は来シーズン途中の復帰を目指している状態だ。さらに故障前の投球でも好不調の波が大きく、地元メディアからも批判を受けることも度々だった。
中4日で投げるためには日本流の調整法では無理?
では両者の間にどうしてこれほどまでの差が生じてしまったのだろうか。
実は今シーズン、黒田と交わした何気ない世間話にそのヒントが隠されていた。彼は「松坂から直接聞いたことはないが……」と前置きした上で、次のような話をしてくれた。
「たぶん松坂くんは、中4日のブルペンで日本の時と同じような投球練習をしてるんじゃないですかね。僕も日本では前試合の投球の反省をしながら、ブルペンで修正しようと力を入れて投げていました。日本なら週1回しか投げないからそれができました。
でも中4日で投げるメジャーで、ブルペンでそんな投球を続けていたら身体がもたないんです。もちろん投球の修正は日本のようにはできないですけど、メジャーでやりながら自分は投球を100にするのではなくて身体を100にしておくことを選んだんです」