日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックが追い求めたトップ下の“幻影”。
本田不在の苦境を乗り切るためには?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/09/17 08:01
「個人的にもトップ下で先発しましたが、ポジショニングや簡単なボールロストでなかなか上手くリズムに乗れずチームに迷惑をかけてしまったなと思っています」と自らのブログに記した長谷部誠
1勝1分け、勝ち点4。
ブラジルW杯アジア地区3次予選の“9月シリーズ”で、日本代表はまずまずのスタートを切った。ホームでの北朝鮮戦で1-0、アウェーに乗り込んで中3日での試合となったウズベキスタン戦は1-1。結果だけ見れば、悪くはない。
ただ、試合内容を振り返ると2試合とも思いのほか苦戦を強いられてしまった。守備を固めてきた北朝鮮に対しては、一方的に攻めながらも後半ロスタイムに入ってようやくゴールをこじ開け、ウズベキスタンには受け身に回ってリードを許し、後半に何とか追いついたという展開だった。試合中に修正しながら冷静に我慢強く戦えたことは今のザックジャパンの強さであることは間違いないが、課題が残ったのもまた事実だった。
苦戦した要因は、一体何か。
これは単に「相手の状態が良かった、モチベーションが高かった」「W杯予選は簡単に勝たせてくれない」では片付けられない。やはり、ケガで離脱した本田圭佑の不在と無関係ではないように思えてならない。ボールの収まりどころが高い位置になかったことが、攻撃面に影響を及ぼしていた。
「トップ下・本田」は時間を操れる。
これまでザッケローニは4-2-3-1の布陣で臨む場合、トップ下にはケガでもない限り、本田の起用にこだわってきた。これは強いプレッシャーにさらされるトップ下での本田のキープ力、そして判断力を高く評価してのものに違いない。本田の能力を最大限に活かす“本田システム”だと言っても過言ではない。
何より「トップ下・本田」は時間を操れる。
中央の高い位置でクサビに入ったボールを受け、キープして時間を使ったうえで相手を引き寄せ、スペースへ走りこむ選手にパスを出す。逆にワンタッチのプレーも効果的に使ってくる。緩急を使いながらゴール前でいかに攻撃をスピードアップさせるか。そこを頭に入れてプレーしているのがよく分かる。ゆえに香川真司、岡崎慎司がフリーとなってゴールに近い位置でプレーでき、そこでチャンスをつくるのが攻撃パターンのひとつになっていた。
しかし、W杯予選スタート時にこのシステムの主役である本田がいない。本田と同様にポスト役を担う前田遼一もケガで招集されていない。レギュラーのポストプレイヤーがいないという状況は、チームにとって予想以上の痛手となった。